ワイルド・カード

公開 2015年
監督 サイモン・ウェスト
公開当時 ジェイソン・ステイサム(48歳)

見終わった後しばらく思考停止してしまうほど、筋なし、意味なし、オチなしの三拍子そろった珍作です。
これを見た後では我らがセガール御大の「沈黙の戦艦」がアカデミー賞級の名作に思えてしまいます。

ギラギラしたラスベガスを背景にステイサムがいつものアクションをするという事のみに重点が置かれているようで、ストーリーや人物描写があまりにも雑な時間泥棒映画と言えます。
映画ワイルドカードのあらすじと感想をレビュー特殊部隊の元エリート兵士ニック・ワイルドは、今では落ちぶれてラスベガスの片隅で用心棒を生業とし、ギャンブルに依存し酒に溺れる冴えない生活を送っていた…

「俺は殴られ、爆破され、騙され、撃たれ、裏切られてきた。大抵の事には驚かない。人間の腹黒さには慣れないがな…」

娼婦で元恋人のホリーがマフィアから暴行を受け、「屈辱を受けた復讐をしたい」という申し出の手助けをするまでの展開は、小粋なセリフ回しといい、後半への期待値を上げる大人のサスペンスアクションとしての味わいがあります。

「あいつらに仕返ししたいの。タマを潰してやる! 手伝って」

ニックはホリーの頼みを断り切れず、主犯のダニーを拘束し恥辱を味合わせる手助けをし、部屋にあった5万ドルを持ち逃げする。
相手はマフィアで一介の娼婦が到底太刀打ちできる相手では無く、「復讐したい」と実行に移すのも非現実的で違和感があります。
映画ワイルドカードのあらすじと感想をレビュー「町を出ろ。俺も逃げる」

5万ドルを山分けし、二人は別れる。
日本円で400万弱では逃走資金としてはあまりに頼りないと言えます。
ニックを巻き込みあまりに感情的で浅はかな行動をしたホリーはこの後登場しません。

後半はマフィアから追われる身となったニックが、いかに追手から逃げ切るかという緊張感ある展開になるかと思いきや、思いもかけない変化球を見せられる事になります。

映画「ワイルドカード」(原題:Wild Card、2015)を見る。ジェイソン・ステイサム主演。 - fpdの映画スクラップ貼

ニックは2万5000ドルを手にラスベガスを去るかと思いきや、カジノに赴きブラックジャックに興じる。
逃走資金を増やしたいという思惑だったが、最初こそ大勝ちし50万ドルを手にするものの、欲を出してさらに勝負に出た結果、手持ちの資金をすべて失ってしまう。

ニックがブラックジャックのテーブルに座りディーラーと勝負をする場面にかなりの時間を割いており、中盤からストーリーの焦点がぼやけ、「カイジ」のようなギャンブル依存症の男の悲哀を見せられることになります。

逃走資金を失い途方に暮れるニックの元に、当然ながらマフィアの追手が迫る。
すわ、ニックは捕らえられエラいことに… と思いきや、ニックは酔いつぶれた状態にも関わらず、十数人からなる刺客をボッコボコに殴り倒し、涼しい顔でその場を去る…

ニックは最強な上に裏社会を取り仕切る大ボスと昔からの友人で、映画の前半真顔で「殺される」と怯えていたのは何だったのかと思えるほど、無敵のチートキャラなのです。
映画ワイルドカードのあらすじと感想をレビュー本作で酷いのは雑な人物描写で、とりわけニックに用心棒を依頼してくるサイラスのキャラクターは破綻していると言えます。
若くして大金持ちになったサイラスは、勇敢になりたいとニックに教えを乞い、「今の自分を認める事ができた」と勝手にニックに感謝し、謝礼として50万ドルの小切手をプレゼントする
ニックに感謝するのも大金を渡すのもまったく理解できず、まるでアイテムを渡すだけのゲームのノンプレイキャラのような不可解な動きをします。

サイラスから大金を受け取ったニックは、再び追手をボッコボコに半殺しにし、涼しい顔でラスベガスを去る。

見終わった後思わず「何かこれ?」とテレビに向かって呟いてしまいました。

WILD CARD ワイルドカード:映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS 映画

「50万ドルあれば遊んで暮らせる。足りないのはあと49万9500ドルだけ…」

ラスベガスから抜け出した後、カリブ海でクルーズを楽しむのが夢だと語るニックですが、ギャンブル大好きで友人も多くそこそこ楽しそうで、なぜそんなに去りたいのか共感する事ができません。

ジェイソン・ステイサムは自身が劇画タッチのクドいキャラなため、本作のようなサスペンスとコメディの中間のようなニュアンスのある作品には全くハマらないといえます。
先日午後ローで放送された「ハミング・バード」にも同じことを感じました。

本作では追手の喉にチップを詰めたりスロットマシーンに叩きつけたりとラスベガスらしいアクションの工夫がなされており、ステイサムのアクションを純粋に楽しみたい人はそこそこ楽しめるのではないでしょうか。

午後ローでは本作のような目も当てられないB級映画が度々放送されますが、頭を空っぽにして見ている間は日常生活のストレスで痛む心に麻酔を打ってもらったかのような心地よさがあり、私にとっては貴重な癒しの時間です。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★
流し見許容度★★★★
午後ロー親和性★★★★