スリープレス・ナイト

公開 2017年
監督 バラン・ボー・オダー
公開当時 ジェイミー・フォックス(50歳) スクート・マクネイリー(40歳)

主人公ヴィンセントがヒーローなのか悪人なのか、映画の中盤まではっきりしないため感情移入しにくく、サスペンスアクションとしては中途半端でキレの無い作品と言えます。
ジェイミー・フォックスの長身でしなやかなボディから繰り出される格闘アクションはキレと重量感があり、本作の見所はバトルのシーンだけといっても過言ではありません。

数十分に一度ヴィンセントと敵のガッツリした乱闘があり、「龍が如く」のような格ゲーアドベンチャーゲームとしてみれば楽しめるかもしれません。

ラスベガス市警察に所属する刑事のヴィンセントは、ギャングらの大量のコカインを押収したことから抗争に巻き込まれていく…

ヴィンセントは覆面の集団からの襲撃で腹部を刺され、息子トーマスを誘拐されてしまう。
その直後、マフィアのボスから電話があり、「トーマスの命が惜しければ、コカインを渡せ…」と要求される。

映画に感情移入できない大きな要因として息子トーマスが全然可愛くない事が挙げられます。

別居中の妻に「トーマスをサッカーの試合に送って行って!」と命令されるヴィンセントなのですが、トーマスは見た目高校生くらいで親が送り迎えする必要性を全く感じません。
アメリカ人というのは、意外と過保護なのですね。
観客の共感を得るためにも、トーマスは小学生くらの子供にした方が良かったのではないでしょうか。

ヴィンセントは序盤に腹部を刺されているにも関わらず、多少痛がっては見せるものの、それを物ともしない超人的な動きを見せており、これが無傷だったらほぼターミネーター並みに無敵だったでしょうね。

内務調査官ジェニファーは、兼ねてからヴィンセントが汚職に関わっていると疑っていたが、ヴィンセントからその正体が内務調査官で汚職警官摘発のための潜入捜査中であることを明かされる。

潜入捜査と言ってもマフィアの組織に潜入するのでは無く、仲間である警官らの汚職を暴くため、自らも汚職に手を染めたフリをしていた…
このあたりの設定が紛らわしくてわかりにくく、ストーリーの焦点をぼやけさせてしまっています。

概ね残念な本作ですが、マフィアの構成員、ノヴァクの存在感だけは際立っています。
マフィア組織の中間管理職的な立ち位置で、酒もクスリもやらず、組織のトップ「親父」の圧に常にピリピリと神経を尖らせ、部下には容赦なく暴力の制裁を加える…
闇組織に生きる人間特有の洞穴のような暗い眼は、彼のこれまでの人生を物語っています。

カジノのオーナー、ルビーノの応接間で「出来立ての"パイ"を嫌う奴なんていないだろ? 旨いしな…」
突然ゴルフクラブを手に取り、フルスイングでゴルフボールを鏡やモニターにガンガン打ち込み
「さて、俺のコカインはどこにある?」

その他にもルビーノの股間をギューッ!とねじりあげ、「俺を舐めてんのか!?」

怒りのエンジンがかかってからトップギアに入るまでの助走が短く、爆発的にキレまくるイカれっぷりに、思考停止し見入ってしまいました。

終盤で「そろそろ本気出しちゃいますよ~」と言わんばかりに、車のトランクからマシンガンを取り出し、涼しい顔で戦場さながらの銃撃戦をおっぱじめる…
ラストはあっさりヴィンセントに銃殺されてしまいまが、もう少しラスボスならではの引きが欲しかったところです。

ノヴァクを演じたスクート・マクネイリーが、「スピーク・ノー・イーブル」で気の弱い父親を演じていた俳優と知り驚いてしまいました。
その他「モンスターズ/地球外生命体」のアンニュイな青年の役といい、とても同一人物が演じているとは思えず、カメレオン俳優っぷりに驚いてしまいます。

最終版は看護師の妻まで病院から駆けつけて参戦、親子三人力を合わせてノヴァクらに立ち向かうドタバタ劇の展開となります。
クライムサスペンス仕立てになっているものの、最終的に家族愛に着地させている展開は陳腐と言わざる得ません。

本作はPG12指定ですが、この手のサスペンス映画によくある事として、興行収入に配慮しより幅広い客層に見てもらうため、尖った演出を排除し脚本を書き直している可能性があり、その結果家族愛を取り入れたヌルい作品に劣化してしまったのかもしれません。

終始ギラギラしたカジノの中での追いかけっこで、原題の「Sleepless」が意味するのはラスベガスが眠らない街である事なのか、ヴィンセントの悪夢のような最悪の1日の事なのか、意味深なタイトルにそぐわないB級作品です。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★★★★