ザ・コンサルタント

公開 2016年
監督 ギャビン・オコナー
公開当時 ベン・アフレック(44歳)

「ジョン・ウィック」や「イコライザー」などの根拠無き強さを持つ雑なキャラ設定のヒーローに否定的な私にとっては、次世代アクション映画と呼びたくなる秀作です。
クールなアクションと深みのある人間ドラマのハイブリッドで、細部まで練りこまれた脚本、最後まで緊張感が途切れず見る者の斜め上を行く展開で、午後ローで無料で見せてもらうのが申し訳なく感じるほどです。

ハーバー神経科学研究所。そこは自閉症や神経障害などの問題を抱えた子供たちが自分らしく生きるため治療を受ける施設。
自閉症で自分の世界に閉じこもるクリスチャンを心配し、両親はこの施設を訪れた。

子供本人のペースで充実した人生を送るのに必要なスキルを身に着けていく事を奨める精神科医に父親は、
「先生は、うちの子が普通に生きられると思いますか?」
「”普通”とは何ですか?」

父親は優しい環境に甘んじず、耐える事を学ばせる選択をする。

クリスチャンの超人的な強さは、父親が軍人でクリスチャンと弟のブラクストンに武術の英才教育を施した事や、クリスチャンが一つの事柄に異常なまでの集中力を持つという事で理論的に裏付けられています。

父親はクリスチャンに「絶対に信頼できる人間を見つけておけ」
クリスチャンが絶対に信頼できる人間、それは弟と、あともう一人…

成長したクリスチャンの表の顔は個人事務所の会計士。
農場主に必要経費の上乗せ方法を提案するなど、「庶民の味方で話の分かる会計士」ということで、クリスチャンに対する好感度がぐっと上がってしまいます。
ただ、農場主に粋な計らいをしたのは、後に敷地内で射撃の練習をしたり、トレーラーの隠し場所を確保するためだったようですね。

金融犯罪取締部局長レイモンド・キングは、複数の犯罪組織の幹部と共に写真に写りこんでいる「会計士」と呼ばれている男に目を止める。
「彼は何故殺されない?」
レイモンドは部下メディナに、徹底的に「会計士」の素性を暴くよう命じる。

クリスチャンは異常なほど用心深く、常に軍隊の一個小隊ほどの武装をしているためか、マフィアも迂闊に手出し出来ないようですね。

リビング・ロボティクス社の会計士として雇われたクリスチャンは、一晩で15年分の会計記録を調査し、使途不明金とその金額を突き止める。
経理部のデイナはクリスチャンの恐るべき集中力に驚きを隠せない。

ロボティクス社のCEOチルトンが何者かに暗殺される。
不正会計の事実を知っているクリスチャンとデイナにも、殺し屋の追手が迫る。

クリスチャンはいくつもの名前を持ち、すぐに身を隠せるようにトレーラーハウスで暮らしている。
そこに保管されている大量の武器を見て驚くデイナ。

デイナを殺し屋から守った事で二人の距離は近づくが、友情を深めるのみに終わった。
「お前が他人と違っている事を、遅かれ早かれ他人は恐れるのだ…」
クリスチャンは父親の言葉を思い出しながら、デイナの元を去る。

最終決戦の舞台となるリビング・ロボティクス社の社長の家に乗り込んだクリスチャンは、意外な人物と再会する。
何と、社長が雇っていた殺し屋は、弟のブラクストンだった。

家族を捨てた母親と、武術の英才教育を兄弟に施した父親、複雑な家庭環境がそうさせたのか、常人と異なる人生を歩むことになった二人。
最終決戦の修羅場にも関わらず、二人が兄弟喧嘩の末、和解するシーンは奇妙でおかしくもあります。

「レオン」を彷彿とさせる、「発達障害のある純な殺し屋」というのはややズルい設定ですが、ベン・アフレックの間が抜けた朴訥な顔は、コミュ障で他人と目を合わすことも出来ないクリスチャンのキャラにぴったりで、あざとさはみじんもありません。

弱きを助け強きを挫く主人公ではないにも関わらず、好感度が高いのは何故でしょうか。
ヤバい組織の会計士をして稼いだ金のほとんどを、ハーバー医師の施設に寄付をしていたという事でヒーローとしてはギリギリセーフといった所で良いでしょう。
心を通わせるガールフレンド役のデイナも微妙におブスでイイ感じですね。

全編を通してクリスチャンの人物像が語られており、2024年に2作目が公開されている所を見ると、これは明らかに「序章」と言えます。

マシンボイスを操りクリスチャンの手となり足となり電話でサポートしていたのは、自閉症を患うハーバー医師の娘だった。
「アメリカでは68人に一人が自閉症と診断されてます。息子さんは劣っていない。違っているだけです
精神障害に対する理解を深める事は製作者の目的とするところでは無いと思いますが、なぜかハーバー意思の言葉が心に染みます。

午後ローでは脱力するようなB級アクション映画が多数放送される中、年に数回ほど本作のような秀作が放送されるので油断できません。
私は午後ローにおけるB級映画は「バカな子ほど可愛い」といった感じで愛おしく、逆に本作のような秀作は「意外なほど優秀な我が子に対して遠慮してしまう親」のような奇妙な気持ちになってしまうのです。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★★
流し見許容度★
午後ロー親和性★