フラッシュダンス

公開 1983年
監督 エイドリアン・ライン
公開当時 ジェニファー・ビールス(20歳)
プロのダンサーを目指す女性が紆余曲折を経てチャンスを掴むというシンプルなストーリーながら、映画を彩る楽曲の素晴らしさと主演のジェニファー・ビールスの魅力で大ヒットし、80年代を代表する作品ですね。
昼は鉄工所で溶接工、夜はナイトクラブでダンサーとして働く主人公アレックスのライフスタイルやおしゃれで遊びのあるファッションなども話題となり、当時小学生だった私はカルチャーショックを受けたのを覚えています。

倉庫を改造した部屋で愛犬と共に暮らすアレックス。
バスケットボールコートほどもある空間に、ベッド、キッチン、レッスン用のバーなどが転々と置かれている無造作でありながらおしゃれな空間に憧れたものです。
昼は鉄工所で働くアレックスのランチは「ターキー・サンド」。
ハンバーガーではなく脂肪の少ないターキーを選ぶところも、体形維持が必要なダンサーらしいですね。

アレックスの働くナイトクラブ「マウビーズ」。
舞台の中央で椅子に座り、のけぞった瞬間、天井から大量の水がアレックスに浴びせらるられる。
シャンディの歌う「ヒー・イズ・ア・ドリーム」に合わせて水しぶきをまき散らしながら踊るダンスシーンは印象的で、「フラッシュダンス」と言えばこのシーンを思い出す人も多いのではないでしょうか。
ダンスシーンはプロのダンサーの吹き替えで撮影されています。
男性客の多くはセクシーなダンサー目当てに店を訪れており、純粋にダンスを見に来ている客は少ないように思えましたが、アレックスらダンサーはステージにプライドを懸けているのです。
現在で言えば「ショーパブ」のような立ち位置なのでしょうが、80年代当時日本に類似の施設は存在しなかったように思います。

アレックスは鉄工所の上司、ニックと恋仲になる。
初デートの後、アレックスはニックを自宅に招く。
ニックの前で堂々と部屋着に着替え、器用に袖の隙間からブラジャーを引っ張り出し床に放り投げる。
当時小学生だった私は「なんでこの女の人は、お客さんの前で服を脱ぐんだろう?」と無粋な事を考えていましたが、無防備な姿を見せる事でさりげなくニックを誘っているのですね。
青春映画にありがちな突っ走り過ぎる恋愛と違い、恋人のニックは年上ゆえかガツガツしておらず、ひたむきに努力するアレックスをそっと後押しする大人の余裕があります。
アレックスが18歳という年齢にも関わらず、完全に自立して、一周り以上年上の離婚歴のある男性と対等に付き合う成熟ぶりに、当時は恐れ入ってしまいました。

ジェニファー・ビールスはアフリカ系アメリカ人とアイルランド系アメリカ人の混血で、黒い大きな瞳にフワフワの髪、ファニーフェイスでありながらどこかエキゾチックで野性味があり、まさに両親の良いとこ取りですね。
映画公開時は資生堂の化粧品「パーキージーン」のイメージモデルに起用されたりと日本でも大人気でした。
メンズライクなジャンパーにダボダボのジーンズ、オーバーサイズのトレーナーを肩出しでユルっと着るスタイルや、ダンスシーンのレギンス(当時はスパッツと呼んでいました)とレッグウオーマーなどは、数年遅れで日本でも流行しました。

私が一番印象に残っているのが、バニーガールのような蝶ネクタイにカフス、前は裸エプロンのようなタキシード姿です。
黒いレースのストッキングも可愛く、この映画の影響で女性のタキシードのようなパンツスーツが流行したように思います。
昼間の溶接工の時の男っぽい服と、デートやダンスの時のセクシーなドレスのギャップがアレックスのセクシーさを引き立てています。

80年代は本作や「ステイン・アライブ」のような、オーディションで這い上がりアメリカンドリームを目指す若者を描いた青春映画が多かったように思います。
アレックスが自宅でレッスンをする時のマイケル・センベロの「マニアック」や、ニックとデートする時のジョー・エスポジト「レディ、レディ、レディ」など80年代を代表するポップスナンバーに彩られ、アイリーン・キャラが歌う主題歌「ホワット・ア・フィーリング」は本作のためのオリジナル楽曲です。
今聴いてもまったく色褪せない名曲揃いで、レンタルレコード店でサントラを借り、夢中で聴いたのを思い出します。
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