キングコング 髑髏島の巨神

公開 2017年
監督 ジョーダン・ヴォート・ロバーツ
公開当時 トム・ヒドルストン(36歳) サミュエル・L・ジャクソン(69歳)
人間の女に現を抜かす従来のキングコングから一変し、あくまで義理と人情に厚い硬派なコング像に好感を覚えます。
野性を忘れ、美女の尻を追いかけ自滅する前作までのお涙頂戴の展開にあざとさを感じていましたが、本作はロマンス要素を切り捨てた「怪獣プロレス映画」とでもいうべき作風ですね。

アメリカが泥沼のベトナム戦争からの撤退を宣言した1973年。
特殊研究機関のランダは、未知の島、髑髏島に潜む謎の巨大生物を調査すべく、パッカード大佐の護衛のもと、案内役のコンラッド、カメラマンのウィーバーらと島へ向かった…
眼下に広がる髑髏島。
巨大生物を引き寄せるため、調査団は密林に次々と爆弾を投下する。
嬉々として爆撃をする調査団の前に、巨大生物が立ち塞がる
「なんだ? あれは…」
自らの聖域を犯されたコングは怒り狂い、ヘリコプター部隊をあっという間に全滅させる。
序盤のコングが巨木を引っこ抜いてヘリめがけてぶん投げたり、軍用ヘリコプターを子供がおもちゃを弄ぶように両手に持って叩き潰す場面は迫力と重量感があり、隊員の絶望を共感する事ができます。

ベトナム戦争の英雄で、生粋の軍人であるパッカード大尉。
彼の使命は残された部下の救出と、部下を殺したコングの抹殺。
降りかかる火の粉を払っただけのコングに対する明らかな逆恨みですが、根っからの軍人ゆえか面子を重んじ、部下の前で後には引けないパッカード。
パッカードの愚かさを引き合いに出すことで、反戦へのメッセージが伺えます。

島にはコングの他にも巨大化したバッファローやタコ、鳥などが生息していた。
巨大なタコをむんずっ!と掴み、生きたまま捕食するコング。
外敵の襲来で生傷が絶えないコングですが、タコのヌルヌルの成分が傷を癒すのに役立っているのでしょうか。

島を探索するコンラッドらは、太平洋戦争以来島に取り残されていたアメリカ兵マーロウと出会う。
マーロウの招きで島の部族の集落を訪れたコンラッドらは、コングが島の守護神であることを聞かされる。
コングは島の地下に棲みつく怪物、スカルクローラーから部族を守っていた。
第一次大戦時の水爆実験の結果、島の生物が巨大化したという設定は「ゴジラ」を踏襲しているのでしょうか。

マーロウは髑髏島での生き残りの日本兵、イカリの形見である日本刀を所持していた。
「俺たちは軍服を捨て、国を捨て、友達になった…」
敵対心があるものとそうで無いものを見分ける知性があるのか、それとも霊長類同士のシンパシーなのか、コングはコンラッドらに危害を加えようとはしなかった。
あくまでコング退治に固執するパッカード大尉と、無駄な殺戮は辞めすみやかに島を去ろうとするコンラッドらの意見は対立する。
彼らは無事に髑髏島から脱出できるのか…

終盤のコングとスカルクローラーとのバトルは、コングの霊長類ならではの掴んでブン投げる、振り回す、引き裂くなどのキレのある技が効いており、怪獣プロレスならではのダイナミックさがあります。
コングは「成長期」だと語られていましたが、人間に例えるとティーンエイジャーくらいなのでしょうか。
同属の個体は存在せず、島の守り神キングコングが絶滅してしまったら島はどうなるのか心配になってしまいます。
トム・ヒドルストン演じるコンラッドは、元軍人でサバイバルに熟練しているという設定ながら、髑髏島ではさほど能力を発揮する事無く、主役としては存在感が薄い印象です。
中盤のガスマスクを付けて日本刀を振り回す場面以外は見せ場は無かったと言えます。
なんと吹き替えはGACKTだったのですね。
クールで渋く、演技もそこそこで、にわかに彼を見直してしまいました。

私がこの映画を見て思い出したのは、1976年製作のイギリス映画「クイーン・コング」です。
新人俳優のレイの主演映画の撮影のため、撮影隊がアフリカ奥地を訪れたところ、そこにはアマゾネス王国があり、レイは生贄として拉致されてしまう。
そこに現れたアマゾネスらの守り神であるクイーン・コングがなんとレイに一目惚れ。
見世物にするためロンドンに連れてこられたクイーン・コングは怒り狂い、ロンドン中を破壊しつつもレイと再会。
警察や軍隊が動き出すものの、ロンドン中の女性がコングを救うデモを起こし、ラストは二人で仲良くアフリカに帰って行くというストーリーです。
前作までのお涙頂戴の「キングコング」のストーリーを男女逆転させたような内容なのですが、特筆すべきは二人が最後に結ばれるという点で、レイはクイーン・コングの情の深さにほだされ、人間とゴリラの垣根を飛び越えて本気で惚れてしまうのです。
単なるおバカ映画の枠に留まらず、ジェンダーや女性差別の問題にも踏み込んだ社会派映画の様相も呈しています。
日本語版の広川太一郎の軽妙な吹き替えも相まって、現在でもカルト的な人気を誇る作品です。

前作までの人間の女に惚れるキングコングのイメージがあるせいか、本作のコングを男性だと信じている人も多いと思うのですが、性器の部分は毛で覆われ性別は明らかになっていません。
情の深さ、忍耐強さ、孤独に対する耐性から鑑みて、本作のコングは女性ではないかと私は思うのです。
髑髏島で孤独に暮らす女性コングが心配になってしまいますが、なんと最新作「ゴジラ×コング 新たなる帝国」で、コングはついに同類の個体と巡り合う設定になっています。
ぜひとも漢気あるイケメンコングと恋に落ち、髑髏島での子孫繁栄を実現してほしいものです。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★★★
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