カニング・キラー/殺戮の沼
午後ロー10月21日放送
公開 2008年
監督 マイケル・ケイトルマン
公開当時 ドミニク・パーセル(38歳)
動物パニック映画において冒頭に「これは実話に基づいた物語である…」とテロップが出る場合、99%以上の確率で駄作な事が多いのです。
動物パニック映画をつまらなくしている3要素として、1.余計な社会問題を取り入れている 2.件の動物が登場するのが遅い 3.チープなCG などが挙げられ本作は見事にこれの条件を満たしています。
ブルンジ共和国の川に実在し、300人以上を捕食したグスタヴと呼ばれるワニの話を元に描かれているのですが、社会派要素を盛り込んだことによりワニの恐怖が薄まり、グダグダで取っ散らかった印象です。
テレビ局のプロデューサーを務めるティムは、汚職事件の取材で失態を犯してしまい、汚名返上のため、ブルンジ共和国に赴き巨大ワニ「グスタヴ」捕獲の取材をするよう上司に命令される。
がっしりしたガタイを見込まれたのか、「水曜スペシャル 川口浩探検隊」のような仕事を振られるティム。
古今東西を問わず、巨大生物捕獲番組と言うのは、数字を持っているのですね。
ブルンジ共和国は紛争の絶えない危険な地域。
ティムはカメラマンらとともに「グスタヴ」の生息する沼へと向かう。
件の「グスタヴ」は映画の中盤まで姿を見せず、ティムらは村で祈祷師の占いを受けたり、子供たちと交流したりと、尺稼ぎともいえる無駄なシーンが多く、見る者の緊張感を萎えさせる展開です。
撮影クルーの一人が偶然、武装集団が祈祷師を銃殺している所を目撃しそれをカメラに収める。
映像をアメリカに持ち帰り、テレビで報道しようと提案するティムに、黒人クルーのスティーブンは、
「アメリカでは近所で黒人が殺されても誰も関心を持たない。遠いアフリカで何人死のうと、誰が関心を持つ?」
突然に盛り込まれる人種問題や国際問題に、ワニ映画であることを忘れ、襟を正したくなっていまいます。
「虐殺で川に捨てられた死体を喰ったワニが、人間の味を覚え巨大化した…」
ワニより怖いのは人間、というよくある着地ですね。
ブルンジ共和国の政府軍や、内戦の武装集団、グスタヴを交えた血みどろの戦いに巻き込まれたティム一行は、果たしてブルンジ共和国から脱出する事ができるのか…
ワニのCGはさほどチープでは無いものの、粗が目立たないようにか夜のシーンが多く惜しい仕上がりです。
ありふれたB級作品と言える本作の中でも出色といえるシーンが一か所あり、それは動きの遅いイメージがあるワニが、草原の中を全力疾走で人間を追いかける場面です。
このシーンは本作の中で唯一緊張感があり、映画「28日後…」で走るゾンビが登場した時と同じような衝撃がありました。
ワニは水陸両用型の猛獣という点でサメよりタチが悪く、生ける恐竜とも言える迫力あるビジュアルにも関わらず、さほど恐怖を感じないのは何故でしょうか。
私が考察するに、それは「追いかけられる緊張感に欠ける」点では無いかと思うのです。
高速で水中を追いかけてくるサメと違い、ワニは水中でも陸でもスピードが遅く、ある程度の距離を取っていれば逃げ切れる安心感があり、これが恐怖感を萎えさせている原因では無いかと思うのです。
また広大で謎多き海と言う背景を持つサメと比べ、ワニの川や沼といった背景の「舞台の狭さ」にも、ストーリーを広げられないジレンマがあり、本作は94分とコンパクトであるにも関わらず、ワニだけでは尺を稼ぐことが出来ず、余計な紛争や社会問題を盛り込んでしまった感があります。
ワニ映画の場合、午後ローでも度々放送される「ブラック・ウォーター」のようなシチュエーション系低予算映画の方が映える傾向にあり、新進気鋭の若手監督による一転突破系アイデア勝負の作品を見てみたいものです。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★★★★
午後ロー親和性★★★★★
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