ミッドナイト・マーダー・ライブ

2024年11月14日

午後ロー10月31日放送

公開 2022年
監督 ロムアルド・ブーランジェ
公開当時 メル・ギブソン(66歳)


メル・ギブソン主演作を信頼して映画館に見に行った人は、さすがに怒りを覚えたのではないでしょうか。
本作のオチは「大人の悪ふざけ」というよりは「ダマし」に近く、観客をナメきった卑怯な作風といえます。

NetflixやAmazonprimeなど、上質で安価な動画配信サービスが群雄割拠し、エンタメ業界がし烈な競争にさらされている2022年に、本作のような映画がハリウッドで制作されたとは驚くべきことです。

ラジオの人気深夜番組「オン・ザ・ライン」のDJを務めるエルヴィス。
放送中にゲイリーと名乗る男から、妻と娘を人質に取ったという脅迫めいた電話が入り、エルヴィスは妻子を救うため奔走することになる…

エルヴィスは自らのラジオ番組でリスナーに暴言を吐いたり、アシスタントをイジり倒したりと、老害を絵にかいたような最低オヤジで、局長にも自重するように警告されるほどの暴走っぷりなのです。
「オン・ザ・ライン」はかなりの長寿番組だそうで、例えるなら米ラジオ界における「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」のような立ち位置でしょうか。

ゲイリーと名乗る男から妻子を救うため、ラジオ局の入るビルの中を新人アシスタントのディランと共に右往左往するエルヴィス。
ラジオ局の入るビルに爆弾を仕掛けたゲイリーは、起爆装置に手をかける…

ありふれたB級作品かと思いきや、終盤は見る者を唖然とさせる展開となります。

なんと、今までのラジオ局を舞台にした攻防は、すべて新人ディランを騙すためのドッキリだった。
エルヴィスの妻子は誘拐されておらず、ゲイリーは人気ユーチューバーで、最初からドッキリ要員として仕込まれていた…

パーソナリティのエルヴィス本人を騙すならまだしも、名も無い新人アシスタントをドッキリにかけたところで完全に内輪ネタで、リスナーは完全に蚊帳の外、ライブを最後まで聞いた人は「何ㇲかこれ?」となるのではないでしょうか。
この一連の騒動はすべてラジオで生中継されていたそうで、実際にこんな物騒なネタを中継で流そうものならSNSの炎上どころか世間からお𠮟りを受け、番組どころかラジオ局もろとも存続の危機に立たされるのは間違いありません。

さらに、最終的に騙されていたのはエルヴィスであり、一連の騒動は彼の誕生日を祝うためのサプライズだった、という実につまらない2段オチが用意されています。

番組のSNSは大炎上、かねてからもっとSNSを活用すべきだという局長の思惑通り番組は大バズりし、聴取率アップの起爆剤となる… これはあまりにご都合主義過ぎますね。
老害パワハラおやじエルヴィスは、今回の件で反省するでも成長するでも無く、
「今夜もぶっ飛ばすぜ!」
と、番組継続の意欲満々の雄叫びで映画は幕を閉じます。

同じドッキリ系でもデヴィット・フィンチャーの「ゲーム」が上質な大人のファンタジーだったのに対し、本作は完全に子供騙しのクソ映画と言っても過言ではないでしょう。

この手のワンシチュエーション低予算映画は、若手監督と名も無い新人キャストがプロットの巧みさで勝負するのが定番で、わざわざメル・ギブソン御大が主演を務める作品で無いことは確かです。

メル・ギブソンは「アポカリプト」「ハクソー・リッジ」など監督作では骨太で硬派な作品を製作するのに、近年では午後ローでも放送された「リーサル・ストーム」などのグダグダのB級作品に出演する事が多い印象です。
年齢的に、自らが主演なら作品のクオリティにはこだわらないというスタンスなのでしょうか。

本作は制作にも名を連ねており、キャリアの汚点、晩節を汚したことは間違いないでしょう。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★
流し見許容度★★★★
午後ロー親和性★★★★