スペル
公開 2009年
監督 サム・ライミ
公開当時 アリソン・ローマン(30歳) ジャスティン・ロング(31歳)
見終わった後「私は一体何を見たんだろう…」と思わせるのですが、ホラーとコメディのバランスが絶妙で、グロ描写も少なく夏休みに家族で見るにはぴったりの映画です。
まさに「笑い」と「恐怖」は紙一重といったところでしょうか。
監督のサム・ライミは「スパイダーマン」三部作で有名ですが、彼の原点であるポップカルチャーとしてのホラー「死霊のはらわた」に原点回帰したような作品で、他の雑多なホラー映画とは一線を画す内容です。
クリスティンは老婆の姿をした悪霊に逆恨みされ、最後まで理不尽な仕打ちを受け続ける悲劇のヒロインにも関わらず、呪いにも負けない不屈の人間力でその逞しさには元気をもらえるほどです。
銀行の融資部門で働くクリスティンは、ある老婆のローン返済延期申請を断るが、それを機に恐るべき呪いを掛けられ恐怖のどん底に落とされる…
本作の主役のクリスティンほど、悪霊とガチプロレスを繰り広げたヒロインは映画史上にも稀なのではないでしょうか。
「あんたの負けだよ!クソババア!!」
序盤、老婆との車内ガチバトルでの足蹴りや顔面への肘鉄、ホッチキスなどの文具を使ったキレのある反撃はプロレスの場外乱闘を見ているようです。
老婆から呪いをかけられて以降、クリスティンの周囲では次々と不可解な出来事が起こり始める。
事態を打開すべく、クリスティンは恋人クレイとともに霊媒師ラムの元を訪れるが、ラムはクリスティンに憑りついた怨霊の正体を見抜くや怯え出し、
「お代はいりません。すぐにお帰りください…」
これは医者に「大きい病院で検査してもらってください」と言われた時と同じくらいの破壊力がありますね。
嫌いな上司に向かって大量の鼻血を噴射したり、彼氏の実家での大失態や老婆のゲロを実にタイミングよく顔面に浴びせられたりと、漫☆画太郎の世界観を感じるシーンが数多くあり、力業で爆笑させられてしまいます。
ラストはクリスティンの戦いも虚しくバッドエンドで終わりますが、最後まで緊張感が途切れず飽きさせない展開です。
突然現れた老婆の孫娘に、
「あんた、昔太ってたでしょ。私にはわかるの」と揶揄されるクリスティン。
田舎の農場出身で母親はアルコール依存症、子供の頃は肥満症でコンプレックスだらけ、懸命に努力し銀行の融資部門の次長を目指す努力家なのです。
映画のヒロインは決して動物を殺さなというセオリーを破り、呪いを説くため背に腹は代えられないとばかりに飼い猫に手をかけ、
「あれ、君猫飼ってなかった?」
「そうだけど、猫なんて突然プイとどこかへ行ってしまうものでしょ」
その反面、優しさゆえに「呪いのボタン」を誰に渡すか決められず、意を決して老婆の墓を掘り起こし口の中にボタンを突っ込むなど、清濁併せ吞む大人の決断ができ、そこらへんの小娘とは違う懐の深さがあります。
ホラー映画のヒロインと言えば大抵は良い子ちゃんで、正論しか吐かない印象がありますが、クリスティンは人間的で思わず応援したくなってしまうキャラクターです。
サム・ライミは高校生の頃から友達と8ミリ映画の自主製作を始めカルトホラー映画で脚光を浴びたオタク気質のある監督で、クリスティンのようなキャラクターをヒロインに据えるとはさすが「わかってるな~」と拍手を送りたくなってしまいます。
私の中で恋人クリス役のジャスティン・ロングは「ジーパーズ・クリーパーズ」「ヒューマン・キャッチャー」などホラー映画専門俳優のイメージがあり、彼のイケメン過ぎない調度良さがヒロインを程よく引き立てています。
頭を空っぽにして見れる最高のホラーコメディで、子供の頃に見た「8時だよ全員集合!」の「志村うしろ、うしろ~」を思い出してしまいました。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★★★
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