パーフェクト・ケア
午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は最近Amazonprimeで見た映画パーフェクト・ケアの感想です。
ネタバレ有です。ご注意ください!
公開 2020年
監督 J・ブレイクソン
公開当時 ロザムンド・パイク(41歳) エイザ・ゴンザレス(30歳) ピーター・ディンクレイジ(51歳)
「王様のブランチ」でミニシアター系映画の秀作として紹介されていたのを思い出し鑑賞しました。
この映画のキャッチコピーは「あなた資産〈死ぬまで〉守ります」なのですが「全員悪人」でも良いくらい、ほぼ悪人しか登場しません。
詐欺まがいの手法で高齢者から財産を搾り取る主人公のマーラがレズビアンだったり、敵対するマフィアのボスに個性派俳優ピーター・ディンクレイジがキャスティングされていたりと、開始十数分で一筋縄ではいかない作品だという事がわかります。
マーラはパートナーのフランと共に、高齢者後見人制度を利用し詐欺まがいの手法で巨額の利益を得ていた。
彼女たちの餌食となる高齢者は、認知症という虚偽の診断によって強制的に施設に監禁される。一度入所したら出ることは無く、後見人がすべての財産を管理する事になる。
一人暮らしの高齢者ジェニファーを標的にしたマーラは、いつもの通り彼女の財産を搾り取ろうとするものの、ジェニファーにはマフィアの後ろ盾がついていた…
金持ちの老人に狙いをつけ、医者とグルになって認知症と診断させ施設にブチ込み、ヤクザ顔負けの手法で後見人の名のもと財産をだまし取る。
映画の前半はマーラと相棒のフランキーが、情け容赦なく高齢者から搾取の限りを尽くす展開で、見る者は完全に「天罰下れ!」モードに入ってしまいます。
高級品を身にまとい、大勢の高齢者の写真の前で満足気な表情を浮かべるマーラの小憎らしさと言ったら…。
ここまで感情移入できるのもロザムンド・パイクの演技力あってのことでしょうね。
それにしても、本人の許可も意思表示も無く勝手に後見人が決められてしまうなど、アメリカでは本当にあるのでしょうか。
もしあるのだとすれば、かなり問題のある制度と言えますね。
マーラとフランは金持ちで身寄りのない老人、ジェニファーをターゲットに定める。
が、なんとジェニファーはマフィアのボス、ローマンの母親だった。
マーラはジェニファーを施設から解放するようローマンから脅しを受けても、怖気づくどころか一歩も引かず、取引を持ち掛けるのです。
ローマンの言うように「肝の据わり方が半端じゃない」ですね。
マーラの信念である「この国では奪うものと奪われる者しかいない。フェアプレイをしていたら生き残れない」
マーラの生い立ちについては描かれていませんでしたが、貧しい家庭の出身という設定なのでしょうか。
マーラの金への執着は尋常ではありませんね。
マフィアに拉致され自動車事故に見せかけ川に沈められたマーラは自力で脱出し、懲りるどころか反骨精神むき出しでマフィアに反撃を仕掛けるのです。
どこまで気が強いのか、完全にイカれてますね。
事故の衝撃で奥歯が抜けてしまった事に気が付いたマーラは、怒りの雄叫びを挙げる。
九死に一生を得たというのに、奥歯が抜けた事が悔しくてたまらないように見えるのです。
ずぶ濡れの状態で立ち寄った売店で何故か牛乳を買うマーラ。
後から調べて知ったのですが、抜けた歯を牛乳などのタンパク質に浸しておくと歯根の神経組織が死なずまた再生できる事があるそうですね。
ここまで冷静に行動できるなんて、普通はありえません。
アメリカ人は歯を見れば階級がわかるというほど、セレブになればなるほど歯のケアは徹底する印象です。
アメリカでは日本のような保険制度は無いため、一回の治療にかかる費用も高額で、貧困層ではおいそれと受診することすらできないのではないでしょうか。
中流家庭の子供でも、親が借金をしてまで歯列矯正をさせるのはアメリカ人の歯に対する思い入れゆえですね。
マーラにとって歯を失うというのは、耐えがたいほど悔しいことであり、帰還して真っ先に歯医者で治療をしてもらうのも彼女の意識の高さが表れています。
ローマンらは凶悪なマフィアであるにも関わらずあまりにやり方が手ぬるく、簡単にマーラの術中にハマってしまうのです。
狡猾であるとはいえ一般人のマーラを舐めていたのでしょうか。
後半のマーラの反逆パートはあまりに彼女の都合の良いように事が進み過ぎている感がありましたが、マーラがあまりに強いため、マフィアのボスであるローマンが可哀そうに思えてくるほでした。
ローマン役のピーター・ディンクレイジは「ゲーム・オブ・スローンズ」などのファンタジー作品に登場する事が多い印象ですが、強烈な個性のマーラに劣らない存在感を発揮しています。
ラテン系セクシー美女のエイザ・ゴンザレスなど主要キャストの強烈なキャラクターが生かされており、まさにキャスティングの勝利と言えます。
ロザムンド・パイクは、現在ハリウッドにおいて悪女を演じさせたらピカ一の女優ではないでしょうか。
クールな美貌で、ふてぶてしく血も涙もない鋼鉄のようなマーラのキャラクターがぴったりハマっています。
「ゴーンガール」でもサイコパスな妻役をモンスター感たっぷりに演じていました。
前半はマーラの極悪非道ぶりにひたすら胸糞なのですが、終盤は見事な悪童ぶりにあっぱれと言いたくなってしまいます。
監督のJ・ブレイクソンが脚本、制作も手掛けており、先が読めず見る者の想像の斜め上を行く展開で、サスペンスとしてはかなり見応えがあります。
同じく彼が監督した「アリス・クリードの失踪」も見たくなってしまいます。
ラスト、マーラは自業自得とも言うべき最後を迎えますが、それでも見る者の溜飲は下がらず、消化しきれない思いが残ります。
マーラは巨万の富を手に入れ何がしたかったのか、それによって何を得たいのかがわかりませんでした。
社会的強者になって弱者を見下したかっただけなのか、単なる金への執着なのか…
「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉があるように、強欲も行き過ぎると自分の首を絞める事になるのですね。
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