バラキ

2022年7月6日2023年4月23日

午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は午後ロー７月５日放送バラキの感想です。
公開　１９７２年
監督　テレンス・ヤング
公開当時　チャールズ・ブロンソン５１歳

タイトルとポスターから想像するに、チャールズ・ブロンソン演じるマフィアの狂犬、バラキの無双ぶりを堪能する映画かと思いきや、マフィアの下っ端構成員の悲哀を描いているのですね。

マフィアの血の掟を破り、イタリア系マフィア、コーサ・ノストラの実態をアメリカ議会で証言したジョゼフ・バラキ。彼の証言を基にした実話にもとずく映画。バラキの証言を通して、彼のコーサ・ノストラ入会から出世、逃亡、当局に保護されるまでの経緯を描く。

仲間にはめられ組織を裏切った罪で、刑務所の中でも始終命を狙われるバラキ。
自らの減刑と、マフィアのボス、ジェノベーゼへの復讐心から、FBI捜査官ライアンに、巨大マフィア組織「コーサ・ノストラ」の実態を語り始める…
バラキの述懐が始まり、時は３０年前に遡る…

当時５１歳のチャールズ・ブロンソンが髪を黒く染めただけで、普通に２３歳の役を演じています。

イタリア移民の子として生まれ、若い時から窃盗などの犯罪に手を染めていたバラキ。ある事件に関わった事がきっかけで、マフィアの構成員になる。
いわゆる「兄弟の盃を交わす」のイタリア版「血の儀式」。
お互いの指を針で傷つけ、傷口を重ね血を混ぜ合わす事で義兄弟となる…
バラキは正式にマフィアの構成員となるのです。

バラキの最初の仕事は、マフィア幹部の運転手。
幹部から「おい、そこの若いの」と声を掛けられるのですが、顔はどう見てもおっさんなのです。
これはもう、歌舞伎や能の世界ですね。「若者」という役柄を与えられた５１歳のチャールズ・ブロンソンは、誰が何といっても「若者」なのです。

直属の上司の娘、マリアと結婚するのですが、どう見ても父親と娘ですね。
マフィア同士の抗争が激しくなるにつれ、お互いのしのぎを確保するため、いままでタブーとされてきた麻薬取引にまでビジネスが発展し、バラキも不本意ながらそれに加わることになる。

イタリアマフィアの「血の掟」…　決して仲間を裏切ってはならない、仲間の女に手を出してはならない。

もしこれを破った時は、恐ろしい制裁が待っている。
マフィアのボス、ジェノベーゼの女を寝取った中堅幹部は、罰として局部を切り取られるという恐ろしい制裁を受けるのです。

バラキはいい年になっても運転手をさせられていたり、しのぎもレストランとカジノのスロットマシーンのあがりなど実に細々としたもので、マフィアの組織の中では底辺に属すると言っても良いと思います。権謀術数を使って賢く立ち回り出世していくというよりも、不器用で、面倒な仕事を押し付けられる役回りと言えますね。
仲間の裏切りで逮捕され、懲役刑を受けるのは「仁義なき戦い」の主人公、広能昌三を彷彿とさせます。

組織に忠誠を誓ってきたバラキは仲間の裏切りによって逮捕され、１５年の懲役刑を受ける…
自らの減刑と自分を裏切った組織への復讐心から、FBI捜査官ライアンにマフィアの実態を証言するのです。

バラキはファミリーを裏切った罪の意識に囚われ自殺を図るのですが、FBI捜査官ライアンに発見され一命を取り留めるのです。
ライアンはバラキに「君を守って、ジェノベーゼより長生きさせてやる」と誓い、彼を独居房に入れるのです。
マフィアの掟を破ったバラキを殺そうと、刑務所に放たれた刺客から彼を守るにはそれしか無かったでしょうね。
バラキはマフィアの構成員として生き、命懸けて尽くしてきたのにも関わらず、結局は仲間に裏切られ命まで奪われようとした…　そんな彼を救ったのはFBI捜査官ライアンなのです。堅気のFBI捜査官ライアンが一番男らしく義理堅かったですね。

「血の掟」だ「ファミリー」だと言いいながら、結局連帯意識を持たせて仲間同士で監視し合うようにさせているだけ。幹部にとっては下っ端の構成員など金を稼ぐための歯車の一つに過ぎないのです。
男性にはこういった枠組みに酔ってしまう性質があるのでしょうか。
俗に人を殺すことを「バラす」などと言いますが、バラキの名はこの言葉を連想させますね。
チャールズ・ブロンソンの演技は大雑把で繊細さに乏しく、内面の葛藤を感じにくいのです。それゆえ私には、不器用なおっさんがマフィアの世界で翻弄される悲哀を感じてしまいます。
ワイルドでカッコいいチャールズ・ブロンソンを見たいと思って見た人は、少し拍子抜けしてしまうかもしれませんね。