フォーリング・ダウン
午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は午後ロー4月15日放送フォーリング・ダウンの感想です。
公開 1993年
監督 ジョエル・シュマッカー
公開当時 マイケル・ダグラス(49歳) ロバート・デュバル(62歳)
統計によると夏は他の季節と比べ、犯罪発生率が格段に上がるのだそうです。
暑さが人間の理性を奪うのでしょうか。
本作の宣伝文句は「平凡な男が猛暑とストレスで理性を失い怒りを爆発させる」というもので、見る者の溜飲を下げスカッとさせる内容かと思いきや、男があまりに身勝手でイカれたサイコパスであるため同情できず感情移入できませんでした。
冒頭の渋滞と暑さに耐えきれず車を乗り捨てるシーンから、雑貨店の店主を相手にバットを振り回してキレるまでの助走が短く、「平凡な男」と呼ぶにはあまりに凶暴と言えます。
登場人物は巡査部長のブレンダガストと部下のサンドラ以外、濃淡はあれど皆うっすらと狂気を帯びており、人種差別や男女差別上等の荒んだ世界観の中でストーリーが展開していきます。
ジャンルを細分化するとしたら、本作はサスペンスアクションブラックコメディといった所でしょうか。
仕事もリストラされ、家族にも愛想をつかされた男ウイリアム。
治安の悪さゆえか、外見が真面目なサラリーマン風の彼は、至る所でチンピラに因縁を付けられる。
まるで「わらしべ長者」のように次々とチンピラ共の武器を奪い、バット→ナイフ→機関銃→バズーカと武装もインフレーションしていくのです。
ウイリアムに絡む連中のクセの強さといったら…
極めつけは、ウィリアムが立ち寄った「軍事用品払下げ店」店主の男です。
ナチ風の軍服を身に着け、ゲイのカップルに対して「男同士でヤるなんて信じられねえ。俺の店から出て行ってくれ!」
聞き込みに立ち寄ったブレンダガストの部下サンドラに
「前から思ってたんだが、何で女の刑事は“オフィサレス”って言わないんだ? 女優はアクトレスって言うだろ? 男と女は区別するべきだよな」
「あんたは俺の代弁者だ」とウィリアムに第二次世界大戦時のバズーカを授ける。
筋金入りの差別主義者でウィリアムをしてドン引きするほどのキ〇ガイなのです。
ハンバーガー店でバーガーが写真とあまりにも違うと機関銃をぶっ放しながら憤るウイリアム。
どら焼きのような平べったいバーガーを手に取り「これを見ろ!! ぺったんこだ!!」
チェーン店のバーガーではよくある事ですよね。
会員制の高級なゴルフクラブに侵入し、「ゴルフ場なんかにしないで、子供たちのために動物園にするべきだ!!」
ゴルフを楽しんでいた富裕層の老人は「俺たちは高い金をはらってプレイしてるんだ! さっさとここから出ていけ!」
興奮した老人は心臓発作で倒れるも、薬はゴルフカートの中。
ゴルフカートを機関銃で破壊したウイリアムは「残念だったな!!」
ふいを付かれるようなブラックなコメディ要素満載で、随所で爆笑してしまいました。
巡査部長ブレンダガストは、情緒不安定な妻を気遣い危険な現場の捜査から離れ、定時で帰宅できる内勤に配属してもらうも、仲間からは「腰抜け」と揶揄されていた。
退職を控えていたブレンダガストだが、白シャツにネクタイ姿の男の目撃証言が一致しているのを不審に思い捜査に乗り出す。
「俺は、家に帰りたいんだ」
家では妻ベスに対しモラハラの限りを尽くし離婚されたウィリアムだが、一人娘に対する愛情は深かった。
行く先々で凶行を重ねながら、妻と娘の住む家に向かうウィリアム。
ベスはウィリアムに怯え、娘を連れ家から逃げる。
海辺の桟橋でベスと娘を見つけたウィリアムは、怯えるベスに無理やり復縁を迫り、娘を抱擁する。
ウィリアムは、銃を所持していた。
ブレンダガストはウィリアムに銃を向け
「お前は妻と娘を殺し自分も自殺しようとしていた! それがお前らの行動パターンだ!」
ブレンダガストのこの言葉は、中二病をこじらせたような男の陶酔を一蹴するような怒りと悲しみに満ちています。
彼は職業柄、ウィリアムのような身勝手で自暴自棄になった人間の凶行を散々見てきたのではないでしょうか。
ブレンダガストの発した銃弾に倒れ、海に沈むウィリアム。
ウィリアムのような失うものの無い「無敵の人」無差別に殺人を犯す事件は後を絶ちませんが、生まれた環境や生い立ちが悲惨だったとしても、怒りの矛先を罪のない人々に向けるのは絶対に間違っていると断言できます。
彼らには一見幸せそうに見える人々も、それぞれに悩みや問題を抱え精一杯生きているという事を分かって欲しいものです。
ロバート・デュバル演じるブレンダガストは娘を無くし情緒不安定になった妻を気遣う優しい夫なのです。
妻の寂しさからの我儘を受け入れ「恐妻家」と妻を馬鹿にした同僚に一発お見舞いする…
ウィリアムを含め、イカれた登場人物が多いせいか、ブレンダガストの人間性と倫理観がより際立っています。
ウイリアムはリストラされたものの、前職は「ミサイルを作っていた」と語っており、セールスマン風の外見ながら意外にも技術職だったのですね。
マイケル・ダグラスは午後ローにおける「サスペンスの帝王」と言えますが、彼の役柄はたいてい大物投資家や会社役員などの庶民を見下すようなエリートで、普通のサラリーマンの役は珍しいのではないでしょうか。
サスペンスのみならず、本作のようなブラックコメディにもハマっており、彼の演技の引き出しの多さを感じます。
何はともあれ、角刈りのマイケル・ダグラスを見れるのは本作だけでしょうね。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★
流し見許容度★★
午後ロー親和性★★★★★
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