キリング・フィールズ 失踪地帯

公開 2011年
監督 アミ・カナーン・マン
公開当時 クロエ・グレース・モレッツ(14歳)
「この物語は実話に基づいている…」と冒頭にテロップが出る映画は99%の確率で駄作な事が多い印象です。
制作者のドキュメンタリータッチで硬派な作品を作りたいという意向と、映画としてのエンターテイメント性との間で折り合いが付かず、中途半端な出来に仕上がっている事が多いのです。
本作もクロエ・グレース・モレッツが出演している事以外、何ら見どころの無い作品で、サスペンスとしてはまったくの消化不良です。

アメリカ中西部の片田舎にある町、通称「キリング・フィールズ」は、労働者階級の低所得層が住人のほとんどを占めており、そこでは強盗、娼婦にポン引き、ドラッグを巡るトラブルが日常的に起こる犯罪多発地域。
謎解きサスペンスというよりは、犯罪多発地域での日常風景を切り取ったような淡々とした作風です。
訳あってニューヨークから配属されたブライアンと、地元出身のマイクの刑事コンビ。
二人は今日も少女の他殺死体が発見されたとの報告を受け、現場に捜査に当たっていた。
ブライアンはかねてから保護観察中の少女、アンを気に掛けていた。

次々と起こる少女の連続殺人。
二人の刑事は容疑者を探すも、怪しい人間だらけでこれといった手がかりも掴めない。
手を切断された少女の遺体が発見されたり、シングルマザーの家が襲撃にあったり、全身刺青の町のチンピラと銃撃戦を繰り広げたりと、ミスリードさせようとするような展開が数多く挟まれますが、焦点がはっきりせず、中盤から誰が何を追っているのかも曖昧になってくるのです。
結局、冒頭に出てきた娼婦であるアンの母親の客が犯人だったようですが、彼がなぜ複数の少女を誘拐し死体を損壊したのかなどの動機は全く語られません。
他の少女は殺されたのにアンが沼地で無傷で発見されたり、ブライアンが胸部に銃弾をくらった上、一昼夜放置されたにも関わらず生きていたことなど、疑問点が数多くあります。
もっと言えば、なぜブライアンが数多くいる不幸な少女の中でアンにだけ目を懸けるのかもまったく説明が無いのです。
午後ローでは数々のB級サスペンス映画が放送されますが、その中でもトップクラスにグダグダな作品と言えます。

クロエ・グレース・モレッツを始め、サム・ワーシントン、ジェシカ・チャスティンなど、魅力的なキャストが多数出演していますが、脚本が雑過ぎるため完全に役者の無駄使いと言えますね。
特にマイク役のサム・ワーシントンは、地元育ちでありながら馴れ合いを嫌い毅然として町のチンピラと渡り合う熱血刑事を好演しています。
明らかに駄作と言える本作の中でも一点だけ出色の部分があり、それは死体の描写の生々しさです。
舞台となったキリングフィールズが湿地帯という事もあってか、少女の惨殺死体からは腐臭が漂ってきそうなほどのリアリティがあり、地上波放送できるギリギリのラインだったかもしれません。
監督は「ヒート」などの数々のヒット作を手掛けたマイケル・マンの娘、アミ・カナー・マン。
カリフォルニア大学出身の才媛で父親の映画の助監督などを務めていた経歴があるそうです。
42歳の若さでこれだけのキャストを出演させ監督ができているという事は、親の威光の賜物でしょうか。
本作を製作するにあたり、元となった事件の現場に赴き徹底的に取材をしたそうですが、クライムサスペンスとしての骨太さがまるで無く、富裕層の白人娘が安全圏から「キリングフィールズって怖いよね~」で終わっているように見えます。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★★★
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