フェイス/オフ
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公開 1997年
監督 ジョン・ウー
公開当時 ニコラス・ケイジ(33歳) ジョン・トラボルタ(43歳)
ニコラス・ケイジとジョン・トラボルタの豪華共演に免じて、設定の雑さには目をつぶるべきなのでしょうが、私のような心の狭い人間は終始「んな、アホな…」と突っ込みをいれたくなる映画でした。
90年代のハリウッド映画らしい派手さがあり、荒唐無稽なストーリーを成立させてしまう主演二人の顔面力で押し切る作品ですね。
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FBI捜査官のアーチャーは、長年追ってきた宿敵、凶悪犯のキャスターを追い詰め逮捕するも、攻防の末キャスターは負傷し昏睡状態に陥る。
キャスターがロサンゼルスに最近爆弾を仕掛けた事を知ったアーチャーは、刑務所に収監されているキャスターの弟から情報を聞き出すべく、驚くべき作戦に身を投じる…
その作戦とは、最新医療の技術でアーチャーの顔にキャスターの顔面を移植してキャスターになりすまし、刑務所に潜入してキャスターの弟から情報を聞き出すというもの。
「あなたはキャスターについて誰よりも詳しいわ。任務がすんだらすぐに元に戻す。決心して」
最初は躊躇する者の「なんとかなるかもしれない」と任務を引き受けるアーチャー。
なんという無茶振りでしょうか。
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顔面交換手術シーンの雑さといったら…
寝ている二人の顔のラインに雑にマジックで線を引き、レーザーで「ウイ~ン」と顔面を切り離して「パカッ」とアーチャーに貼り付ける。
人体をレゴブロックか何かだと思っているのでしょうか。
「最先端の科学が生んだ顔型だ」
すべては「最先端」「特殊な」という言葉で片付けられ、ディテールが語られることはありません。
「髪の生え際のラインは、レーザーで調整できる」
任務のためとはいえ勝手に生え際を後退させられては、たまったもんじゃありませんよね。
そうは問屋が卸さないと「待った」を掛けたくなりますが、ストーリーは観客を振り落としどんどん進行します。
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キャスターになりすましたアーチャーは、アズワン刑務所に潜入、最近爆弾の情報を聞き出す作戦を開始する。
囚人には金属製のロボコップのようなブーツが履かされる。
「刑務所全体が巨大な磁石になっていて、そのブーツでどこにいても居場所がわかる」のだそうですが、これはどう見ても経費の無駄遣いですね。
入れ替わったアーチャーとキャスターは、互いの家族と交流を深める。
意外にもアーチャーと入れ替わった極悪犯キャスターは、スタイリッシュな振る舞いと女あしらいの巧みさで、冷え切っていたアーチャーの妻イブや娘との不和を修復していく。
一方、キャスターと入れ替わったアーチャーは、愛人とその息子と出会い、親子のような情愛を深める。
中盤には家族入れ替わりドラマのようなパートもあり、本作の見どころの一つかもしれません。
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脱獄したアーチャーは妻イブの元に戻り、キャスターの顔をしているが自分こそは本物のアーチャーだと説得する。
最初は疑うものの、夫の血液型が違っていることを確認し「私、あの男と1週間も夫婦としてすごしてしまったのよ…」
一番の被害者はイブと言えますね。
娘に手を出されなかっただけ、マシというべきでしょうか。
「おれはキャスターになりすまし刑務所に潜入した。特殊な手術をしたんだ。バカな作戦だよ…」
やる前に気付けと思うのは私だけでしょうか。
それぞれの家族を巻き込みながらも、入れ替わったキャスターのアーチャーの攻防戦が始まる。
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任務は終了、無事自分の顔を取り戻したアーチャーは、愛人の息子を引き取り、家族4人で新たな生活をスタートさせる。
本編は138分の長尺で、午後ローではカットされているため話が繋がらない部分も何カ所かあります。
互いが鏡の中の自分に銃を向けるシーンやラストの教会での攻防など、ジョン・ウーならではの華麗なアクションシーン満載です。
途中で善悪の役柄が入れ替わる設定で、主演二人のキャスティングが効いています。
ジョン・トラボルタは元ダンサーだけあり、キレのある動きと洒脱な振る舞いが様になっていて、デンジャラスでセクシーなキャスター役がハマっています。
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リアリティ皆無のアクション満願全席的な作風にサスペンスの捻りを加えた変化球で、90年代らしい華やかさがあります。
本作のような突っ込みだしたらキリがない作風は、今のご時世だったらネットで低評価の嵐でしょうね。
スマホで気軽に映画を楽しめるようになって以来、多数の作品を見るようになったためか、つい重箱の隅をつつくような批評家目線で映画を見てしまうことが多くなりました。
辻褄だ、伏線だ、などと重箱の隅をつつく事無く、若い頃のようにもっと素直に映画を楽しみたいものです。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★★★★★
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