テロ、ライブ
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公開 2013年
監督 キム・ビョンウ
公開当時 ハ・ジョンウ(34歳)
最初から最後まで緊張感が途切れず、流れるようなスピード感があり、一気に見てしまいました。
見る者の集中力を途切れさせることなく最終盤まで突き進む展開は秀逸で、俳優力、脚本力、監督力が三位一体となった韓国映画の底力を感じます。
地上波放送の映画をここまで真剣に最後まで見たのは数年ぶりかもしれません。
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元人気キャスターのヨンファは、ラジオの生放送中にリスナーからの電話で爆弾テロの犯行予告を受ける。
いたずらと思い相手にしなかったが実際に爆破事件が起こる…
不祥事からテレビのキャスターを降ろされ、ラジオ番組のパーソナリティを務めるユン・ヨンファは、番組に電話をかけてきた男がテロ犯だと確信する。
報道キャスターの性からか、ヨンファはテロ犯とのインタビューを単独報道し、テレビの報道番組に返り咲こうと目論む。
爆破テロを起こした犯人に、リアルタイムでインタビューする…
この状況では誰でもテレビにくぎ付けになってしまうでしょうね。
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ヨンファの思惑通り、視聴率は急上昇するも、パク・ノギュと名乗る犯人からの電話で、途方もない要求を突き付けられる。
それはヨンファが直接政府に働きかけ、大統領を生出演させて謝罪させろ、というもの。
犯人はヨンファのイヤホンに爆弾を仕掛けており、デスクから少しでも動けば爆発させると脅迫する。
大統領は来るのか、来ないのか…
視聴率主義と人質救助の間で揺れ動く人々と犯人の駆け引きが始まる。
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中盤の舞台はほぼスタジオ内で、ヨンファはデスクに座る上半身のみの映像にも関わらず、緊張で細かく動く眼球と必死にメモをとる手元、次々と変化する局面に合わせて切り替わる画面など、手に汗握る緊張感があります。
大統領の代わりに現れた警察署長が放送中に本当に爆弾で死亡する事で、犯人の狂気が強調され、同じくイヤホンに爆弾を仕掛けられているヨンファの恐怖を共感する事が出来ます。
爆死した署長の血を浴びたヨンファが、思わずペットボトルのお茶でデスクの血を洗い流すのも妙に人間的で、韓国映画ならではの細かい演出を感じます。
ヨンファの働き掛けも虚しく、大統領は現れなかった…
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犯人は放送局の隣のビルを爆破。
ビルは爆破により崩壊しながら放送局側に倒れ、スタジオ全体が傾く。
スタッフ全員避難し一人残されても、斜めに傾いたスタジオで必死に態勢を保つヨンファ。
この期に及んで爆破を恐れデスクにしがみつくのもまるでコントのような滑稽さがあり、スタジオの片隅のヨンファが花形キャスター時代のポスターがパニックの最中も背景に映りこむなど、至る所にブラックユーモアが散りばめられています。
スタジオ内のモニターは、傾くテレビ局を映し出し、ビルの中にいるヨンファは呆然とそれを見つめる。
テレビ中継と同時にスタジオは徐々に傾いていく…
CGのレベルも高く、何といっても特殊効果を感じさせない俳優の迫真の演技が素晴らしいですね。
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この手の作品はご都合主義のハッピーエンドで終わりがちですが、意表を突いたバッドエンドで幕を閉じます。
ヨンファを演じたハ・ジョンウは今や韓国を代表する俳優で、ナ・ホンジンやパク・チャヌクなどの実力派監督とタッグを組んだ作品が次々と公開されており、彼の出演作はハズレが無い印象です。
独特のクセがあり、表情を深読みしたくなる奥行きのある俳優ですね。
私が子供の頃の1970年代、日本映画は黒澤明の作品が世界的に評価されるなどレベルが高く、それに引き換え韓国映画は地味で野暮ったい印象がありました。
1990年代に金大中大統領が打ち出した文化産業振興法により、グローバルに集客できるようエンタメ産業に多額の資金が投じられ、その結果韓国映画は格段にレベルアップしました。
現在韓国の映画製作は、最初から世界進出を見据えており、その勢いはハリウッド映画をも凌ぐと言っても過言では無いかもしれません。
それに引き換え日本は国内の小さな市場をターゲットにした映画製作が主流になっいる感があり、将来的に少子化で国内需要が先細りする未来を考えると、早い段階で世界進出を視野に入れた作品作りに舵を切った方が良さそうですね。
本作は2025年2月に阿部寛主演で「ショウタイム・セブン」の邦題でリメイクされるそうです。
個人的に阿部寛は活舌があまり良くない印象があるので、ニュースキャスター役はハマらない印象です。
午後ローで韓国映画が放送されることは私の知る限り初めてだと思います。
まったり流し見れる古い洋画も好きですが、時にはキレのある韓国映画も放送して欲しいものです。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★★
流し見許容度★
午後ロー親和性★
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