極道の妻たちⅡ
公開 1987年
監督 圡橋亨
公開当時 十朱幸代(45歳) かたせ梨乃(30歳) 村上弘明(31歳) 草笛光子(54歳)
「極道の妻たち」シリーズ第二弾で、修羅のヤクザ社会で男に代わって義理人情を貫く妻たちを描いており、地上波でも何度も放送されたのを覚えています。
前作の岩下志麻のやや誇張された姐御の印象が強いせいか、本作の十朱幸代は物足りなく感じる人もいるかもしれませんが、私は「極妻シリーズ」の中で最も秀作で、単独の邦画としても充分見応えのある作品だと思うのです。
弱小ヤクザ組織の組長であるダメ夫を、献身的に支える妻、遊紀。
全編に渡り、組の借金返済に奔走する遊紀の姿が描かれます。
前作のような派手さは無いものの、組員の生活を背負う重責を淡々とこなす遊紀の姿が、逆にリアリティがあり、裏社会の怖さがジワリと浮き彫りになります。
金策に駆けずり回り、組員の尻拭いをしたり、慶弔の礼を粗相無く執り行ったりと、ヤクザの奥さんなどというものは常に神経をすり減らし、気苦労の絶えないものなのでしょうね。
夫・孝明との馴れ初めは劇中で描かれないものの、元芸妓で情にもろい遊紀が押しの一手で口説かれたと思われる背景が透けて見える構図です。
同じシマでしのぎを削る萬代組の若頭から、夫・孝明の2億円の借金を返せない場合は、重盛組の解散と資産の売却を迫られる。
遊紀は、芸子時代の知人で現在はバーのママ兼金貸しの松代を訪ね徳島に赴く。
「あんた本当は、うちに金を借りに来たんやろ?」
遊紀は松代から元ヤクザで凄腕ギャンブラーの木本を紹介され、成り行きでポーカーをすることに。
遊紀の窮地を知ってか、木本はポーカーでわざと負け、遊紀は数百万円を手に入れる。
「姐さん、徳島は楽しかった…」
去ろうとする木本に遊紀は「女だと思ってバカにして」
金を返しに後を追いかけようとする遊紀に松代は札束を握らせ
「あんたが勝ったんや。木本さんに恥をかかせたらあかん」
「人間、死ぬまでバカ踊りや」
松代を演じた草笛光子の出演により、さらに本作の深みと味わいが増しているように思います。
前作は岩下志麻の妹役で出演した、かたせ梨乃が木本の元妻の役で出演しています。
本作でも日本人離れした見事な裸体を披露しており、現在では考えられない事ですが、私が10代だった80年代は地上波でボカシ無しで放送されていました。
彼女は「極妻」のほとんどの作品に出演しており、シリーズの顔的な存在ですね。
萬代組5代目襲名披露が韓国の済州島で行われ、それに合わせ大規模な賭博が行われる事に。
遊紀は木本の協力のもと、博打で数億円の金をものにする。
萬代組事務所を訪れた遊紀は2億円を突き返し、
「虫けらやと思うて舐めてたら、その首飛ぶかもしれまへんで」
啖呵を切って事務所を去る…
全編通して抑えた演技だっただけに、最後の単価は痺れるものがありました。
情けない旦那に代わり、魑魅魍魎うごめくヤクザ社会で男と対等に渡り合う遊紀という女性は、仮に普通の社会人だったとしても、企業の常務取締役くらいのポジションに出世するくらい、有能な女性なのではないでしょうか。
岩下志麻のようなカリスマ性には欠けるものの、図らずも極道の妻になってしまった女性の苦悩を共感する事ができます。
可愛さと芯の強さ、組を背負う姐と女性としての自分の間で揺れ動く十朱幸代演じる遊紀は、歴代「極妻」の中で際立って魅力的で、強く印象に残ります。
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