刑事コロンボ 5時30分の目撃者

公開 1975年
監督 ハーヴェイ・ハート
公開当時 ピーター・フォーク
(48歳)

「刑事コロンボ」シリーズは「金曜ロードショー」で何度も放送され、お馴染みのテーマソングと共に水野晴郎の「今日は皆さんお待ちかね、刑事コロンボの登場です…」
金曜の夜、家族揃って見たのを思い出します。

1971年から1978年まで放送されたファーストシリーズは名作ぞろいで、コロンボの人間味溢れる魅力的なキャラクターと練りこまれたストーリー展開で、見終わった後推理小説を読んだ後のような心地よい余韻が残ります。

「5時30分の目撃者」は私が初めて見た刑事コロンボで、当時アメリカで人気スターだったジョージ・ハミルトンが犯人役だったこともあり強く印象に残っています。
コロンボと精神科医マークの息詰まる心理戦、コロンボのキレのある推理に最後まで緊張感が途切れ無い展開で、最終的にコロンボの仕掛けた罠に犯人がまんまとハマりボロを出すというオチです。
「目撃者は、あなた自身です」
コロンボの決め台詞で幕を閉じる…

犯人は医者や弁護士など名声のある知識人や有名人であることが多く、彼らは始めこそ風采のあがらない一介の刑事であるコロンボを軽視しているものの、「油断ならない奴」と気付いたときにはもう手遅れ、コロンボに完全に尻尾を掴まれている。

「あ、そうだ、もう一ついいですか…」
コロンボがよく使う手法ですが、これは巧みな心理戦術ですね。
取り調べが終わり気が緩んだところで不意を突かれ、犯人は大抵ボロを出すのです。

飄々としてボンクラなおっさん刑事を装っているものの、どんな小さな手がかりも見落とさない野獣のように鋭い観察力で完全犯罪のアリバイを突き崩していく。
「お気の毒だが、この世に完全犯罪なんてものは無いんだ…」
時折見せる刑事としての信念に痺れたものです。

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冴えない風貌に似合わず底知れぬ知性を隠し持っているのがコロンボの魅力と言えます。
「殺しの序曲」のラストで天才しか入会することを許されない「シグマ会」のメンバーである犯人がコロンボに難解なIQテストをし、すんなり回答したコロンボに「あなたは警察に置いておくには惜しい」と賛辞したシーンが印象に残っています。

状況証拠を並べて検挙するのではなく、心理戦で追い込み最終的に犯人に自白させるのもコロンボの人間性が現れていますね。

「うちのカミさんがね…」
コロンボのお馴染みのセリフ。
実際にコロンボの妻は登場することは一度も無く、尻に敷かれていると思われるエピソードが語られるのみです。
刑事コロンボのスピンオフとも言える「ミセス・コロンボ」も放送されましたが、こちらも夫コロンボは一度も登場しません。

ピーター・フォークは2011年に83歳で亡くなっているのですね。
一度オリジナル版を見たとき、ピーター・フォークの声が思ったより甲高いのに驚きました。
やはり私の中でコロンボといえば小池朝雄の吹き替えで、この声以外は考えられません。

父が刑事コロンボが放送されるたび、VHSのビデオに録画しラベルに綺麗にタイトルを書いて保存していたのを思い出します。
犯人を追い詰めるクールな面と、恐妻家で冴えないおっさんとのギャップが何とも魅力的で、単なる二枚目俳優とは異なるニュータイプのヒーローだったと言えます。

現在では「刑事コロンボ」が地上波で放送されることがほとんど無くなったのは少し寂しいですね。
家族皆でテレビを見た金曜の夜を懐かしく思い出します。