ベイビー・ドライバー
午後ロー8月27日放送
公開 2017年
監督 エドガー・ライト
公開当時 アンセル・エルゴート(23歳) ケヴィン・スペイシー(58歳) リリー・ジェームズ(28歳) ジェイミー・フォックス(56歳)
公開当時レンタルで視聴しましたが、エドガー・ライト監督作品ということで期待して見たものの、雰囲気だけの中身が空っぽな作品という印象でした。
ネットの感想などでは高評価が多く「エドガー・ライトの最高傑作」との声もあったので、当時の私が真剣に見ていなかったせいかと思い午後ローで見直しましたが、やはり薄っぺらい作品という印象は変わりませんでした。
新旧の名曲が登場人物の動きに合わせた「音ハメ」と呼ばれる手法でスタイリッシュに散りばめられており、派手なカーチェイスなど音楽と車が好きな人には最高の作品かもしれませんが、それ以外のドラマが雑で、辻褄が合わない部分も多く心理描写が雑で、人間的な感情の動きを無視した脚本と言えます。
天才的なドライビング・センスを買われ、犯罪組織の「逃がし屋」として働くベイビー。
ウェイトレスのデボラと出会ったことをきっかけに犯罪稼業から足を洗うことを決意するが、彼の才能を惜しむドクがそれを許さない…
映画の序盤、ベイビーは仕事仲間と一切会話せず、常にイヤホンを装着し音楽を聴いており、人の会話を勝手に録音してリミックス音楽を作ったりと、他人に興味がない変わり者で発達障害の傾向がある青年として描かれている割に、ダイナーで出会ったウェイトレスのデボラのようなキラキラ女子に難なくアプローチできるコミュ力があり、これには違和感を感じてしまいます。
これはアンセル・エルゴートのイケメンでは無くかといってブサメンでも無い絶妙なルックスの無駄遣いで、ベイビーはデボラに思いを寄せながらも声をかけることができない陰キャ設定にした方が自然で面白かったのではないでしょうか。
2017年の作品ですが意外にも劇中にスマホは登場しておらず、登場人物は二つ折りの携帯電話を使用しています。
ベイビーは交通事故の後遺症で難聴を患っており、雑音をかき消すため常にイヤホンを装着しているという設定なのですが、現在は皆日常的にワイヤレスイヤホンを着けており、残念な事に今改めて見るとベイビーの重要なキャラ設定の一つが効果的に働いていませんね。
序盤はスピード感ある展開でしたが,バッツが登場し暴走し始めるところからストーリーが支離滅裂になり収集がつかなくなった感があります。
バッツは取引相手を警察と決めつけ銃を乱射し、誰彼構わず喧嘩を売る無計画でバカ丸出しのチンピラなのです。
名優ジェイミー・フォックスをこの役にキャスティングする必要は無かったのではないでしょうか。
ベイビーは映画が進むにつれ、身体能力も射撃の腕もプロのヒットマンレベルに進化しており、「運転だけが天才的に得意な普通の青年」というキャラクターが完全に揺らいでしまっています。
逃がし屋稼業に嫌気がさしたベイビーがわざわざデボラを誘って一緒に逃げるのも腑に落ちず、デボラがまだ男女の関係にもなっていないベイビーに命がけで付いていく展開や、私利私欲のみでベイビーを利用していただけのドクが、終盤で急に体を張って二人を逃がすのも納得できません。
ベイビーは逮捕され、刑務所で服役することで現実とのバランスをとっているつもりなのでしょうが、結局早期で仮釈放され迎えに来たデボラと抱き合って終わるという、ヌルくて甘ったるいハッピーエンドを迎えます。
バリー・ホワイトの「Never、Never Gonna Give Ya Up」をバックに二人がキスをするシーンは一番のクライマックスで、まさにハリウッド映画の真骨頂ここに極まれりという感があります。
MVのようなストーリーよりイメージ重視の作品で、デートムービーにはぴったりですね。
犯罪に加担する天才ドライバーを扱った映画は「トランスポーター」など数多く制作されていますが、私が一番秀作だと思うのは2011年ライアン・ゴズリング主演の「ドライヴ」です。
「何があっても、5分は待つ…」
淡々とした作風ながら主人公の「逃がし屋」としての矜持を感じる作品でした。
私の中でエドガー・ライトの代表作はやはりゾンビ映画の名作「ショーン・オブ・ザ・デッド」です。
「銀河ヒッチハイクガイド」「スコット・ピルグリム」「ラスト・ナイト・イン・ソーホー」などエッジの効いた秀作が多数ありますが、全体的には玉石混合な印象があります。
エドガー・ライトの映画を午後ローで見ることができるなんて、時代は変わったなと思う今日この頃です。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★
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