オールド

2022年9月18日2023年3月8日

午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は最近見た映画オールドの感想です。
(ネタバレ有です！ご注意ください)

公開　２０２１年
監督　М・ナイト・シャマラン
出演　ガエル・ガルシア・ベルナル　ヴィッキー・クリープス　アレックス・ウルフ　トーマシン・マッケンジー

バカンスを過ごすために訪れた美しいビーチで、「時間」が異常なスピードで加速し、身体が老いていく不可解な現象に見舞われた家族の恐怖とサバイバルを描く。

「世にも奇妙な物語」の一篇を無理やり２時間ドラマに拡大したような内容ですね。
この映画は予告編でおおよその展開が明かされているため意外性はなく、少し長く感じました。

たったひとつのネタで一点突破するシャマラン監督の手法は独特ですね。

観光客が訪れたこの奇怪なビーチでは、３０分で１年、１日で５０年分の歳月が流れる。

時空の歪みによって起こる急激な外見の経年変化耐えきれず、徐々に正気を失っていく登場人物たち。

肉眼で確認できる速度で老いていく大人と、成長する子供…
まるで人生を１０倍速の早送りしているようなものですね。
彼らの精神的な変化を見ると、もはや急速に成長する肉体に精神が支配されているように思えます。

老いる事は人智をもってしては抗えない悲しい宿命ですが、神が人間に与えた罰なのでは思えるほど、ある意味残酷なものですね。

結局、製薬会社の治験のために利用されていた彼らなのですが、命は助かったものの、人生の一番楽しい時期を奪われたトレントとマドックスの兄弟はこの後どうなるのでしょうか。
製薬会社から何十億慰謝料をもらっても取り返せるものではありませんね。
案外、世にも奇妙な体験をした人間としてメディアにひっぱりだこになり巨万の富を手に入れるかもしれませんが…。
たった一日で子供から大人になってしまったにも関わらず、分別を兼ね備えているように見える二人なのですが、やはり肉体と言うのは感情を支配すると言えます。

家族の父親の役でガエル・ガルシア・ベルナルが出演しています。彼は「モーターサイクル・ダイアリー」で若き日のチェ・ゲバラを演じていました。

兄弟の姉マドックスの役でトーマシー・マッケンジーが出演しています。彼女は２０２１年の話題作「ラストナイト・イン・ソーホー」にも出演しており、今最も注目されている女優ですね。

М・ナイト・シャマラン監督は必ず自身も作品に登場するのですね。
ストーリーの辻褄も合っており、たった一つのネタを広げまくって物語を作ってしまう彼の手腕はさすがですね。

シチュエーションに関係ない唐突なセリフ「ジャック・ニコルソンとマーロン・ブランドが共演した映画の名前を教えてくれないか…」
や、急速に思春期を迎えた少女たちの「なんだか昨日までと違う。心に色が増えたような感じ」など、独特なセリフはシャマラン節といえます。

大自然の中の超常現象でありながら、実は裏で高度なテクノロジーを持つ組織に操作されていたという設定はホラー映画「キャビン」に似ています。
シャマラン監督は、人間が潜在的に最も恐れている事を引き出して映像化する手腕に長けていますね。

「ヴィレッジ」「ヴィジット」「スプリット」「ミスター・ガラス」など、彼の作品をほとんど見ていることに気が付きました。
やはりこの独特の世界観は見る者を惹きつけるのですね。

シャマラン監督はいわゆるどんでん返し系の作品のイメージがあり、ラストにドカン！と種明かしを持ってくるパターンが多いですね。

私の大好きな雑誌TV Brosの中で「五月女ケイ子のお悩み相談室」というおふざけコーナーがあったのですが、その中のお悩み相談で「М・ナイト・シャマランと申します。最近良いどんでん返しがまったく思いつきません。どうしたら良いでしょうか…」と言うものがありそれに対して「それはさぞお困りでしょう。私が思うに、相談者様はどんでん返しにこだわりすぎているのではないでしょうか…」とあり、爆笑したのを思い出します。