ブラックハット

2024年5月25日

公開 2015年
監督 マイケル・マン
公開当時 クリス・ヘムズワース(32歳) タン・ウェイ(36歳)
 

「ブラックハット」とは犯罪目的でコンピューターやネットへの攻撃を行うハッカーのことだそうです。
クリス・ヘムズワースは「マイティー・ソー」のイメージがあるせいかどう見ても脳筋でITに長けた理系男子には見えず、凄腕のハッカー役はミスキャストだったかもしれません。

ストーリーはニコラスを始めとする捜査チームが謎のサイバーテロリストをひたすら追い続ける展開で、2015年製作の作品としてはハイテク描写が古臭く、分かりやすい展開ながらさほど捻りは無い凡庸な作品と言えます。

大好きな女優タン・ウェイが出演していた事で最後まで見る事ができましたが、彼女が活躍するシーンはほとんど無く映画に華を添える程度の存在感でした。

主要キャストに中国人俳優が多数起用されている所を見ると、中国での配給を意識したキャスティングなのではないでしょうか。

中国の原発を爆破した凶悪ハッカー逮捕のため、中国と米国が手を組み捜査を開始。
捜査協力のため投獄中の凄腕ハッカー、ハサウェイを一時出所させることになる。
ハサウェイは中国軍、FBIとハッカーの正体を突き止めるため奔走する
・・・

中国軍とFBIが協力して捜査をするなんて、この頃は現在より米中の関係が良かったのですね。

ニコラスはFBIも顔負けの捜査能力を発揮し、ハッカー探偵と呼びたくなってしまいます。
ハッカーでありながら腕っぷしも強く、敵との乱闘も難なく制するのです。

「ブルートゥースで飛ばす」や「パスワードを設定し直す」「更新日時設定を変える」など、私のようなIT素人でもわかるような用語が飛び交い分かりやすさはあるものの、プロのハッカーの仕事としては物足りなさがあります。
「ブラックハット」のIPアドレスを突き止め、web画面には「server on Jakarta」の文字が…
「わかったぞ! 奴は今、ジャカルタにいる!」これはショボいのではないでしょうか。
「ゴーストプロトコル」や「デッドレコニング」など、一般人を煙に巻くような高度なIT技術を多用して欲しかったものです。

唯一意外だったのは、主要キャスト数人が途中でサイバーテロリストに殺害されてしまう所でしょうか。

リエンとジャカルタに向かったニコラスは、銀行から「ブラックハット」の資金を横取りしおびき寄せる作戦に出る。
ふたりの計画通り、「ブラックハット」は姿を現す…

サイバーテロの首謀者は、実は〇〇だった…といった捻りもまるで無く、「ブラックハット」は終盤になってやっと姿を見せるのですが、これまでの人物相関図外の新顔なのです。
これはある意味、新しいと言えますね。

ニコラスは凄腕ハッカーらしくIT技術を駆使して敵を追い詰めるのかと思いきや、体に雑誌をガムテープで括り付けた手作りの防弾チョッキを着け、凶器を隠し持ち敵にガチガチのアナログ肉弾戦を挑むのです。

ニコラスは「ブラックハット」から横取りした金を手にリエンと共に海外逃亡する。
彼は指名手配中の逃亡犯だというのに、空港で逮捕されないのでしょうか。

タン・ウェイを知ったのは2007年「ラスト・コーション」ですが、それから彼女のファンになり出演作はほとんど見ていると思います。
172cmのスラリとした長身に少女のような童顔、クールで小悪魔的な役を演じる事が多く、映画に艶と華を添える独特の存在感があります。
本作ではプログラマーという設定から神妙な顔でキーボードを叩く場面が多く、残念ながら彼女が活躍するシーンは少ない印象があります。
ニコラスとの恋愛要素も段階を経ず急に親密になったように見え、彼女は出演するならもう少し丁寧な演出が欲しかったところです。

つい最近までWi-Fiの意味も解らなかった私があることがきっかけでITに目覚め、現在ではプログラミングの勉強を始めるようになりました。
プロのハッカーが主人公の映画にもかかわらず、本作に登場するITスキルが初心者の私にも理解できることを少なからず喜んだのですが、2015年の映画だという事を忘れてはいけませんね。
令和の現在は小学生でもプログラミングを学ぶご時世になっており、本作レベルの技術なら一般IT企業のSEでもこなせてしまうのではないでしょうか。

2024年の現在ではchatGPTなどの生成AIがITの主役となり、その進化のスピードたるや必死に情報を追い続けてもすぐに背中を見失ってしまうほどです。
高齢者になっても情報弱者に陥らないよう、振り落とされても振り落とされても喰らいついていく覚悟で勉強しなければいけません。

ニコラスは最終的に「0と1の並びなんてどうでもいい! コードなんてクソくらえだ! 俺は友達の仇は自分で打つ!」と言い放ち敵に肉弾戦を挑むのです。
天才ハッカーなのにITを全否定する発言ですね。

ホラー漫画の巨匠、楳図かずおの名言「笑いを突き詰めると恐怖になり、恐怖を突き詰めると笑いになる」を踏まえて考えると本作の結論は、アナログを突き詰めるとハイテクになり、ハイテクを突き詰めるとアナログになる、という事でしょうか。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★
流し見許容度★★
午後ロー親和性★★★★