PLAN75

2023年8月21日


午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回はAmazonprimeで見た映画PLAN75の感想です。
ネタバレ有です。ご注意ください。
Amazon | PLAN 75 [DVD] | 映画
公開 2022年
監督 早川千絵
公開当時 倍賞千恵子80歳 磯村勇斗29歳 たかお鷹73歳 河合優美21歳

私の好きな俳優、磯村勇斗が出演していたので何気なく見たのですが、最後まで釘付けで見てしまいました。
あまりに重く、ある意味残酷な映画です。

超高齢化問題の解決策として導入された制度「PLAN75」
それは75歳から自らの生死を選択できる制度。
夫に先立たれ、一人で暮らす角谷ミチは、PLAN75の申請を検討し始める。
PLAN 75 : 作品情報 - 映画.com映画「楢山節考」は、70を過ぎた老人は楢山参り、すなわち自死を強要されるという村の風習を描いた作品でした。
早い段階で潔く楢山参りをする老人は「年寄りの鑑」と称賛される。

仮にこの制度が日本で導入された場合、その同調圧力は凄まじいでしょうね。

物語はPLAN75申請窓口で働く岡部ヒロム、PLAN75サポート職員成宮瑶子、ヒロムの叔父幸雄、PLAN75の施設で働くマリアの視点から描かれています。
PLAN 75:映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS 映画78歳の未亡人ミチは、ホテルの清掃員をしながら生計を立てているものの、高齢を理由に解雇されてしまう。
生活保護受給に抵抗のあったミチは、ついにPLAN75に申請する。

マイナポイントのキャンペーンのように、至る所で「PLAN75」を推奨するCМが流れる。
PLAN75を申請した場合、国から10万円の報奨金が出る。

死と引き換えにするには、あまりに安い対価ですね。
生産性の無くなった高齢者の命など、その程度といったところでしょうか。

映画『PLAN 75』公式サイトPLAN75に申請したミチのサポートを担当することになった成宮。
電話での会話を重ねるうちに、二人の心が通い始める。
最後の電話サポートの時、「鍵はかけずに家を出てください。またご自身の気持ちが変ったらいつでも中止できます…」成宮が言葉を詰まらせながら話すこのシーンは、思わず涙が溢れてしまいました。

サポート職員の使命は、PLAN75に申請した高齢者を円滑に死へと導くこと。
成宮が画面からじっとこちらを見つめるシーンは「あなたはどう思う?」と問われているようでした。
Amazonプライム 75歳から自らの生死を選択できる制度 ー 倍賞千恵子主演作『PLAN 75』|2023年2月17日(金)配信スタートミチは覚悟を決め「ランドフィールド環境サービス」へと向かう。
そこはカーテンで仕切られたベッドが並べられており、ガスによる安楽死が行われる。

ナチスによるユダヤ人の虐殺を連想したのは私だけでしょうか。
無機質で簡素な施設からは、国家のために死を選んだ人間に対する敬意はみじんも感じられません。

ミチはベッドに横たわり、マスクを装着する…

キャスト全員素晴らしく、抑えた静かな演技がより一層、この映画のテーマを引き立てているように思います。
倍賞千恵子がカラオケ楽しむ、高齢者の“死の権利”描いた「PLAN 75」新写真 - 映画ナタリー寅さんシリーズのさくら役などで往年の美人女優のイメージがあった倍賞千恵子も80歳を迎えたのですね。
ミチは貧困にあえぐ高齢者なのですが、彼女の凛として上品なたたずまいからはみじめさは感じません。75を過ぎても働き自活しようとする姿からは清々しさと逞しささえ感じます。
CМなどでは年齢の割に若々しい印象がありますが、今作ではあえて老いを前面に出しており、飾らないリアルな高齢者を演じています。
吉永小百合だったら、絶対にこの役は断っていたでしょうね。
彼女が友人たちと共にカラオケで歌うシーンがありますが、わざと下手くそに歌うのって難しいでしょうね。
PLAN 75」倍賞千恵子さんの演技、米英誌が称賛…監督「感動しっぱなし」 : 読売新聞高齢者に近い年齢となり、年々体の衰えを実感している私としては、まさに他人事ではない身に詰まされる内容です。
若い時には、自分が年を取るなんて、考えもしませんよね。
あるいは、自分は年をとってもこんなに衰えはしない、自分だけはいつまでも大丈夫と、私も思っていたものです。
倍賞千恵子主演『PLAN 75』-早川千絵監督、初長編で、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門へ選出の快挙!75歳から自らの生死を選択できる制度が施行された時の人々の姿を描いた衝撃作 - シネフィル - 映画とカルチャーWebマガジンこの映画を見たせいか、夢を見ました。
それは私自身が「PLAN75」のような制度の下自ら安楽死を選び、まさにそれが行われようとする直前の状況でした。
私は恐怖のあまり体が震え、どうしても死を受け入れる事ができずその場から逃げ出すといった夢でした。
目覚めたあとも、その恐怖感だけははっきりと体に残っていました。

どんな凶悪な犯罪を犯した死刑囚でも、死刑を目前にすると恐怖のあまり暴れて逃れようとするのだそうです。
いつかはこの制度を利用したいと仮に思っていたとしても、いざ死を目前に突きつけられれば、誰でも恐怖でたじろいでしまうと思うのです。

ネットでこの映画に対し激しく賛否両論別れた議論がなされている事に驚きました。

映画に対する意見は「PLAN75」の肯定派と否定派に分かれており、肯定派の意見としては「このような制度を作って欲しい。その方が老後安心できる」というものが多かったと思います。
肯定派の大多数は、他人に迷惑をかける事を恐れているのだと思います。あるいは、みじめな老後を送るくらいなら、死んだ方がましという事でしょうか。

もちろん私も、他人に迷惑をかけず、きれいに死ねたらどれほど良いかと思います。

両親を介護の末見取った私からすれば、介護というものは決してきれいごとでは無く、果てしなく介護者の体力と気力を奪う苦行と言えます。

愛情にも限界があります。

それでも私は、たとえ潔くなくても、汚くても、みじめでも、生かしておいて欲しいと思うのです。
死はいずれ必ず、向こうからやってくるのです。
だから、命までは奪わないで欲しい、最後まで生きさせて欲しい。
それが生物の本能なのではないでしょうか。

この映画を見て大いに考え、議論することこそ監督をはじめ製作者の意図する所なのではないかと思います。

画像引用元
映画.com
MOVIE WALKER PRESS
映画『PLAN 75』公式サイト
映画ナタリー
シネフィル – 映画とカルチャーWebマガジン