最高の人生の見つけ方

公開 2019年
監督 犬童一心
公開当時 吉永小百合(74歳) 天海祐希(52歳)
現在日本に「サユリスト」はどのくらい生存しているのでしょうか。
「サユリスト」とは吉永小百合が20代の頃、彼女の熱狂的なファンに名付けられた造語であり、彼女の年齢を考えても存命しているサユリストは日本人口の数パーセント以下ではないかと思われます。
吉永小百合を主演とする映画は2~3年に1本程度制作されており、映画界はこの数パーセントのサユリストのために映画製作をしている事になり、需要と供給のバランスに疑問符が生じてしまいます。
吉永小百合の演技について言及するのは、ある意味日本のタブーに切り込むような事かもしれません。
彼女の演技は私の見る限り「伊豆の踊子」で成長が止まっており、全世界的に見ても彼女の年齢でこの演技をしているのは北朝鮮の人民俳優くらいなものでしょう。
ある時期から現実味を切り捨てた演技スタイルが確立されてきたように思います。

専業主婦の幸枝は、胃がんで余命宣告を受けるも、夫や家族を気遣い言い出すことが出来ない。
仕事一筋に生きてきたホテルチェーンの女社長 球磨子もまた、胃がんで余命宣告を受けていた。
接点の無いはずの二人は、たまたま同じ病院の同室になった事で交流を深める。
病に苦しむ12歳の少女が落とした「死ぬまでにやりたいことリスト」が書かれた手帳を拾った事から、幸枝と球磨子の大冒険が始まる。
リストの内容は「スカイダイビングをする」「ももクロのコンサートに行く」「好きな人に告白する」など、少女らしい夢が詰まったもの。
二人は子供のようにはしゃいだり、時にはケンカもしながら、リストの内容を次々と成し遂げていく。
原案と映画は見ていませんが、やりたい事リストを12歳の少女のものにした事で、渋くなりすぎずエンタメ作品として楽しみやすくなっていると思います。

涙を搾り取ろうとするようなあからさまな「泣かせ」の構造で無く、人生とは何か、どう生きるべきかという重いテーマを軽やかにコミカルに描いており、この手の日本映画としては中々の秀作であると感じました。
本作は吉永小百合より、天海祐希を見る映画ですね。
豪快で人に弱みを見せるのが苦手な球磨子の役が実にハマっており、彼女の魅力を最大限に引き出しています。
余命宣告にショックを受けながらも精一杯強がって信念を貫こうとする姿に、思わず涙してしまいました。
球磨子を陰で支える秘書役のムロツヨシは過剰な演技で鼻につく事の多い俳優なのですが、本作では前に出すぎる事無く淡々とこの映画のコメディ要素を担っており、良い仕事をしていました。

積極的に彼女の主演作を見る事の無かった私ですが、BSで放送されていた「ふしぎな岬の物語」を見て、その「カリオストロの城」のクラリスのような演技に度肝を抜かれてしまいました。
吉永小百合は「天国の駅」「映画女優」などで生々しい女性像を演じていた事もあり、演技派女優へと方向転換するのかと思いきや、60歳頃から年齢不詳の汚れを知らない二次元の少女のような演技スタイルに舵を切った感があります。
年齢を重ねても少女のまま成長する事を許されないのは、サユリストの呪縛なのか、それを裏切る事の出来ない彼女自身の着真面目さなのか、いずれにしても歪な構造になっている事は確かです。
本作でも74歳にして純白のウエディングドレス姿やレトロ着物姿など、ファンに充分配慮した場面も描かれています。
サユリストにとって吉永小百合は「同級生のマドンナ」のような存在で、彼女を否定する事は自らの思い出を汚すことに繋がるのではないでしょうか。
本作のようなぶっ飛んだ非現実的なストーリーのヒロインとしては違和感が無く、仮にこの役を倍賞千恵子が演じていたとしたらまったく違う作品になっていたでしょうね。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★
流し見許容度★★★
午後ロー親和性★
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