ノートルダムの鐘
公開 1996年
監督 ゲイリー・トルースデール
音楽 アラン・メンケン
20代の頃、映画館に3度見に行ったのを思い出します。
差別や情欲などの踏みこんだテーマを描いており、明らかに大人の鑑賞を目的に制作された作品ですね。
アニメーションの美しさ、声のキャスティング、劇中の曲も素晴らしく、間違いなくディズニー映画の最高傑作と言えます。
主人公はノートルダム聖堂に住む孤独な青年カジモドですが、主に彼を取り巻く登場人物を描いた作品で、カジモドとの関わり方で登場人物の思想や人間性を描いています。
ストーリーもさることながら、劇中の楽曲も素晴らしくミュージカルの舞台劇を見ているような臨場感があります。
ノートルダム大聖堂の中で「私に愛を、名誉を、すべてをお与えください…」と祈る富裕層の市民の傍らでエスメラルダが歌う「ゴッド・ヘルプ」は、
「私は何も要りません。今のままで充分です。私よりももっと哀れな者たちをお助けください…」
貧しく明日を知れぬジプシーの女が、さらに哀れな者のために祈る…
思わずわが身を顧みてしまうような、胸に刺さる楽曲です。
最も印象的なのはフロローの歌う「罪の炎」です。
「神よ、私は高潔な人間です。愚かで下品な民衆よりも…」
エスメラルダに恋をしてしまったわが身を恥じ「あの女が私に呪いをかけた」「私の胸か火あぶりの薪か、拒むなら地獄の炎で焼かれるがいい…」
何という身勝手…
圧巻の声と歌唱力で、誰もが心の中に隠し持っている醜く暗い感情をえぐり出されるような凄まじい楽曲です。
作曲家のアラン・メンケンも映画の中で一番気に入っていると語っているだけあって、見終わった後もいつまでも印象に残る名曲です。
キャラクターが生々しすぎるためグッズなどは制作されていませんが、フロローは意外にもディズニーファンの間で隠れた人気があるそうです。
カジモドはノートルダム大聖堂での閉鎖的な暮らしから解き放され、町の人々に受け入れられるも、エスメラルダへの恋は成就せずに終わるのです。
エスメラルダと恋に落ちるフィーバスはディズニー映画の王子様にありがちな能天気なお坊ちゃんでは無く、清濁併せ吞む大人の男として描かれています。
劇中に残酷な描写もありディズニー作品としてはかなり挑戦的な作品だったと言えます。
1989年「リトル・マーメイド」から1999年「ターザン」までの10作品は次々と大ヒットし、ディズニー映画の「第二次黄金期」と呼ばれているそうです。
手書きの長編アニメーションは膨大な人員と時間を要するためか、ディズニー映画はCGでのアニメーション制作が主流になったように思いますが、私は現在の路線にはあまり馴染めず本作のような人間の温もりを感じる作画に魅力を感じます。
本作は公開当時思ったほどの興行収入をあげる事が出来なかったそうですが、金曜ロードショーの「あなたが選ぶ最高のディズニー映画」で放送されるなど、公開後数十年が過ぎても人々の心に残る名作ですね。
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