エスター ファースト・キル
午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は「エスター ファースト・キル」の感想です。
ネタバレ有です。ご注意ください。
公開 2022年
監督 ウィリアム・ブレント・ベル
公開当時 イザベル・ファーマン(エスター)23歳
異色の名作ホラー「エスター」の前日譚を描いた作品です。
前作「エスター」は13年前の作品ですが、身体は子供、心は大人のエスター役を同じくイザベル・ファーマンが演じています。
「エスター」ことリーナは9歳という設定なのですが、この「エスターファースト・キル」の時イザベル・ファーマンは23歳、身長も163cmと大人の女性になっているのです。
エストニアの精神病院を脱走したリーナ。彼女は30歳を超える大人の女性でありながら、成長ホルモンの以上で外見は少女のままだった。リーナは失踪届が出ている少女「エスター」になりすまし、新しい家族と共にアメリカで生活を始める…
エスターを演じるイザベル・ファーマンは、身長こそ伸びているものの、顔はほとんど変化していないように見え、9歳の女の子を演じていてもほぼ違和感を感じません。
ただ、全身のショットの時の子役との切り替えがはっきりとわかるため、それがこの映画の弱点になっていますね。
前作「エスター」では、殺人鬼と知らずに家族に迎え入れてしまった家族がひたすらエスターに蹂躙され死の恐怖にさらされるという内容でしたが、今作では中盤で予想を裏切る展開が待っています。
なんと失踪したはずのエスターは、すでに兄のグンナーによって殺害されており、事実を隠そうとした母親トリシアらの手によって死体遺棄されていた。家族でこの事を知らないのは父親のアレンのみ。
トリシアはアレンとの幸せな生活を維持させるため、最初から偽物だとしりつつ、エスターを養女に迎えていた。
前作の母親のようにひたすらやられっぱなしの普通の母親かと思いきや、秘密を暴こうとした刑事をいとも簡単に銃殺したりとリーナ顔負けの狂気を発動するのです。
「大人しくしていなさい。あんたなんて通報すればすぐ精神病院に逆戻りだよ」
ドスの効いた声でリーナをけん制するトリシア。
それから先はこれが「エスター」であることを忘れてしまうような、ある意味ブラックコメディ風の展開になります。
夫アレンの見えない所で、嫁と姑のように嫌がらせの応酬を繰り返すリーナとトリシア。
エスターは幼少期に父親から性的虐待を受けていた過去があり、そのせいか父親の愛を求め年上の男性に惹かれる習性があるようです。
今作でもアレンに対し淡い恋心を寄せ、あわよくばトリシアから奪おうと画策するのです。
子供だと思ったエスターは、実は30歳の大人だった…というのが「エスター」の最大の肝であるため、ネタバレした上で続編を作るのは無理があったかもしれません。
今作では母親のトリッシュがサイコパスだった、というひねりを効かせていますが、それゆえリーナの怪物性が薄まり、平凡なサスペンスホラーになってしまっていいます。
前作の「エスター」は午後ローでも何度も放送されている名作ホラーですが、映画全体に流れる不穏な空気といい、母親役のヴェラ・ファーミガの楳図かずおのキャラクターを思わせる顔面といい、最後まで緊張感の途切れない秀作でした。
今作が製作されたのは前作「エスター」が好評だったからだと言えますが、それもひとえに当時10歳のイザベル・ファーマンの名演によるものと言えます。
まだあどけない少女にも関わらず時折見せる大人の女のギラっとした視線は背筋が凍るものがありました。
今作では里親の家族が火事で全員死亡している点や、リーナが壁に描いていたブラックライトで光る二重構造の絵の由来など伏線回収になっている点もありますが、「ファースト・キル」という副題で期待してしまうのは、エスターがいかにして精神病院に収容されることになったのか、父親との関係はどういうものだったのか、リーナという怪物がいかにして誕生したのかという点だと思うので、その部分に焦点を合わせた方が良かったかもしれません。
第三作目を製作するとしたら実はエスターは死んでいなかったという設定で、タイトルは「エスター RE :BORN」はどうでしょうか。
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