ハンニバル

2022年7月30日2024年10月2日

午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は午後ロー１０月２日放送ハンニバルの感想です。

公開　２００１年
監督　リドリー・スコット
公開当時　アンソニー・ホプキンス６３歳　ジュリアン・ムーア４０歳　ゲイリー・オールドマン４３歳

前作「羊たちの沈黙」とはまったく違う映画だと思って見た方が良いかもしれません。
サスペンスホラーでありながら、恋愛映画の要素も色濃く出ていますね。

レクター博士は、医学博士にして殺人鬼、しかも人肉を喰らうのが趣味という、常人を突き放したようなまったく掴みどころのないキャラクターで、クラリスとの接点も最小限であり、二人の関係性を観客の想像に委ねる部分がありました。
前作と違う点はレクター博士があまりに人間味が有りすぎ、私たちは見たくなかったレクター博士の弱さを目撃してしまうのです。

レクター博士とクラリスの距離感、決して触れ合うことのできない二人の、愛と恐怖が入り混じったような緊張感のある関係性が見る者を魅了したとも言えると思うのですが、今作では完全に男性としてクラリスを愛するレクター博士が描かれており、見たくない部分を見せられたようで「羊たちの沈黙」好きとしては興覚めしてしまいます。
ハンニバル・レクター博士のキャラクターがあまりに絶大な人気がありすぎたためか、完全にキャラが独り歩きしている感があります。

ハリウッドの巨匠リドリー・スコットが監督をしているだけあって、ハリウッド的な派手な演出満載、レクター博士のキャラクターもわかりやすく描かれていますね。
「羊たちの沈黙」の時の「静」のキャラクターと違い、今作でレクター博士は００７並みにフットワークが軽く世界各国を飛び回るのです。

前作よりも残虐描写は増しており、牢獄から解き放たれたレクター博士は、ターゲットの腸を切り裂いたり、開頭して脳を露出させた上本人に自分の脳を食させたりとやりたい放題です。

メイスン・バージャーを演じたゲイリー・オールドマンは、ほとんど原型を留めないほどの特殊メイクで思わず目をそむけたくなってしまうほどのレベルです。
それにしても、顔の皮を自分で剝がさせて、それを犬に食わせるなんて、レクター博士はエグい事をしますね。
彼の現在の有様がレクター博士の狂気を我々に思い出させ、ストーリーに緊張感を与えています。

筋肉質でボーイッシュなジョディ・フォスターと比べて、ジュリアン・ムーアの熟女感がレクター博士との距離感をことさら縮めているように思えます。
レクター博士を恐れつつもどこか魅力も感じているクラリスの役をクールに演じており、彼女をキャスティングしたのは正解だったのではないでしょうか。
当時アンソニー・ホプキンスは６３歳、レクター博士を演じるには体力的にもギリギリだったでしょうね。
狂気と気品を併せ持ち、どこか見る者を魅了してやまない魅力がある…　彼以外でレクター博士をここまでチャーミングに演じられる俳優はいないでしょうね。

アニメの巨匠、宮崎駿の言葉で印象に残っているのが「芸術家は観客の期待に応えるようなものを作ってはいけない」というものです。
この言葉の意味は大人になった今だからこそわかるのですが、わかりやすく言うと安売りしてはいけないということなのでしょうね。
クラリスをお姫様だっこしたり、キスしたりと、まさにファンの期待に応えて大サービスしてしまった感があります。

アンソニー・ホプキンスは言うまでも無くイギリスの名優なのですが、５３歳の時に演じた「羊たちの沈黙」で世界的に有名なスターになったといっても過言ではないでしょう。
彼には前作に対する愛着があまりなかったのでしょうか。この「ハンニバル」の脚本を読んだ時点で、ジョディ・フォスターのように出演を辞退するという選択もあって良かったかもしれません。

しかしながら、ハリウッド映画の基本はヒットする作品を作る事であり、ヒットしてなんぼのハリウッド映画の世界で、レクター博士ほどの最強人気キャラをほっとく手はありませんよね。

この「ハンニバル」と比べると、ジョナサン・デミ監督の前作は大ヒットしたものの派手さは無く、一般大衆向けと言うよりは一部の映画好きをターゲットにしていたのではないでしょうか。

美しいローマの街やオペラを背景に繰り広げられるレクター劇場は見応え充分、愛あり、アクションありでエンターテイメント作品としては申し分無いといえます。
「レッドドラゴン」「ハンニバルライジング」やテレビ版「ハンニバル」などが続々と製作されるなど、やはりレクター博士はハリウッドのドル箱スターなのですね。