タイトロープ

洋画サスペンス

公開  1984年
監督  リチャード・タッグル
公開当時 クリント・イーストウッド(54歳)
上映時間 115分


クリント・イーストウッド演じるブロック刑事が、殺人事件の捜査の名目で、ありとあらゆるジャンルの性風俗店を渡り歩き、ちゃっかりご奉仕まで受けるエロティックサスペンスと呼びたくなるような構成です。

ブロック刑事は「ダーティ・ハリー」から「硬派」と「信念」を引いたような、弱さと疲れを滲ませる人間味のあるキャラクターとして描かれています

ニューオリンズが舞台という事もあり、全編に渡ってムーディなジャズがバックに流れ、サスペンスとししてのクオリティは低いものの、大人のねっとりした刑事映画という印象をうけました。

ニューオリンズで、娼婦ばかりを狙う猟奇殺人事件が多発する。
事件を担当する事になったブロック刑事は、夜の街で聞き込みを開始する

クリント・イーストウッドは実年齢よりも10歳以上若い役を演じる事が多く、本作のブロック刑事も40代前半くらいの設定のようです。
イーストウッドは90歳を過ぎても自身が監督、主演をする作品では女性から性的なアプローチを受ける場面が必ず盛り込まれ、彼の「男たるもの生涯現役」の気概が伺えます。

公開当時54歳で、彼の中ではまさに男盛り真っただ中といった時代だったかもしれません。
ブロック刑事は聞き込みに訪れた性風俗店で、必ずと言って良いほど嬢からの申し出で「仕事抜き」のサービスを受けるほどのイイ男のようで、彼も役得とばかりにちゃっかりそれを受け入れるのです。

殺された娼婦の仕事仲間に聞き込みをするブロック。
「デカに見込まれちゃったのよ」女は警官による犯行を匂わす。
「刑事もただの男ってことかしら…?」

自身が捜査の目的で接触した娼婦が次々と殺害されることに、違和感を抱くブロック。

ブロックは妻と離婚しており、娘二人を男手ひとつで育てている。
長女のアマンダは父親を心配し、「パパ、どうしていつも遅いの?」

「夜しか会えない人たちもいるんだよ。夜働いている人もいるからね…」
思春期の娘に対し、言葉を濁すブロック。

思春期の女子ともなれば、父親との折り合いが悪くなるのが一般的だと思いますが、別れた元妻がよほどヒドかったのか、アマンダと妹はブロックにベタベタに懐いており、「パパ今日、デートしてきたんだ」とブロックが言えば、「私だったら、今週末誘っちゃうけどな~」と全力応援、その「いい子」さ加減たるや違和感を覚えるほどです。

アマンダの役はイーストウッドの実の娘であるアリソン・イーストウッドが演じています。
アマンダはイーストウッドの「理想の娘」像なのでしょうか。

「レイプセンター(強姦救助センター)」の職員ベリルが、ブロックに捜査情報の開示を求めてくる。

「すぐケンカ腰になる女性とは、あまり話をしたくなくてね…」
好戦的なベリルに対し、当初良い感情を持っていなかったブロックだが、次第に彼女の気さくで飾らない性格に惹かれていく。

「ジムでトレーニングしている君を見ていたら誘いたくなった」
ベリルを食事に誘うブロック。

「君を裸にして汗を拭いたらどんなだろう…」
ベリルはこの発言に対し「あら、嫌だ!」といった具合に笑って流していましたが、これは完全なセクハラで、本作のブロックは随所に隠し切れないスケベな側面が顔を出し、その点でも人間的と言えます。

ベリル役のジュヌヴィエーブ・ビュジョルドは、劇中では美女扱いされていましたが、クセの強いルックスで好みは別れるかもしれません。
彼女は私が昔見て衝撃を受けた映画「1000日のアン」でアン王妃を演じた女優だと知り驚いてしまいました。

「わからないわよ…。 あんただって一度ハマればね」

自身が関係を持った娼婦が次々と殺害されたことで、フロックは精神のバランスを崩していく。
心の奥底に眠っていた自身の歪んだ性癖が目覚めたのか、ブロックは夢の中で女性に手錠をかけ首を絞める。
犯人は、もしや俺自身…?

まさかのどんでん返しがあるかと思いきや、犯人はブロックに逮捕されたことを根に持つ元警官レアンダー・ロルフだった。
この展開には拍子抜けで、登場人物の中の誰かでは無く、相関図外の人物が急浮上したことで、サスペンスとして骨抜きになった感があります。

犯人の魔の手は、アマンダとベリルに迫る
ブロックは愛する者を守ることができるのか…

タトゥーショップでの嬢との会話、
「あんた、ロクな人間と付き合っていないみたいね…」
「どんなのと付き合えって言うんだ?」
「例えば、あたしみたいの」
「会って何する? ボーリングでもするか?」
「あたし、ボーリングは嫌いなの」
「実は、俺もだ…」
スリリングな大人の会話のキャッチボール。
この後ブロックは、聞き込みついでに彼女と関係を持つのです。

淡々とした地味なサスペンスながら、随所に露出の多い美女の映像と、彼女らとブロックのウイットに富んだ会話が差し込まれるため、最後まで飽きさせない構成です。

「タイトロープ」とは綱渡りの意で、善か悪か、状況によってどっちに傾くかわからないブロックの脆く危うい心理状態を表しているようです。

本作のブロック刑事はダーティー・ハリーのような一匹狼では無く、愛する娘を持つ父親で、凄惨な現場と家庭の狭間で精神のバランスを保つのに苦心する様子が描かれています。

イーストウッドは制作に深くかかわっており、あえてダーティー・ハリーで確立された「無敵のヒーロー」像と対比させるような構造にし、俳優としての新境地を開きたかった意図があるようです。

本作は1年に1回は必ず午後ローで放送されることもあり、10回以上は見ていると思います。
それゆえか、私にとってはイーストウッドの代表作と言えば「ダーティー・ハリー」では無くこの「タイトロープ」なのです。

50歳を過ぎたイーストウッドの体から滲み出る疲れと哀愁、山田康夫のかすれた声の吹き替え、退廃した街の雰囲気が味わい深く、「午後ローといえばこの映画」の看板作品であることは間違いありません。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れている事に感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー  ★★
流し見許容度 ★★★★★
午後ロー親和性★★★★★

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