公開 2022年
監督 スコット・マン
公開当時 グレイス・キャロライン・カーリー(26歳) ヴァージニア・ガードナー(27歳)
上映時間 107分
一生分の手汗をかいてしまうほど、「落ちる」という人間の本能的な恐怖をこれでもかと刺激される映画です。
地上600mの高さにある1㎡ほどの足場の上で、二人の女子が決死のトライ&エラーを繰り返しながら脱出を試みる様に完全に感情移入できる107分間の没入体験だったと言えます。
ワンシチュエーション作品ながら、愛、友情、サスペンス、ホラー要素まである盛りだくさんな内容で、この手の低予算映画としてはかなりの秀作と言えるのではないでししょうか。

製作者視点で考えた場合、登場人物をいかにして違和感なく高さ600メートルの塔に登らせるか、その動機作りが第一難関と言えます。
ベッキーはロッククライミングの事故で恋人を亡くし傷心の日々を送っていた。 「つらいのはわかるが、もう一度自分の人生を歩んで欲しい」と、父親からも心配される。
「ちょっと冒険しようと思ってて相棒が必要なんだ。B67テレビ塔今週末に登る予定なんだけど、一緒にどう?」
ベッキーは親友のハンターから新たなチャレンジに誘われる。
「恐怖を克服しなきゃ、一生怯えて暮らすことになる。”生きていたけりゃ死ぬな”でしょ?」
恐怖に打ち勝つために、もっと恐ろしい体験にチャレンジする… アメリカ人らしいアグレッシブで超前向きな考えかたですね。
親友のハンターは四六時中アドレナリンが出っぱなしのイカれたビッチで、フォロワー6万人の過激系インフルエンサー。
彼女に強引に引っ張られる形で塔に登らされる点で、一応違和感なく整合性は取れており、映画として第一段階クリアといったところでしょうか。

2人が登るのは、人里離れた荒野に建つ高さ600メートルの解体寸前のテレビ塔B67。
「みんな~! デンジャーDだよ~ 今からとんでもなくすっごい企画に挑戦します! 今からあのてっぺんを目指して張り切って登ってっちゃうぞ~!」
ハイテンションで生配信を始めるハンター。
塔は経年劣化でボロボロに錆びており、ボルトはグラグラで触れればボロっと崩れ落ちそうなのです。
この時点でもう、嫌な予感しかしません。
梯子を一段ずつ慎重に上る二人。
登っている間にもワイヤーは軋み、ボルトは一本、また一本と抜け落ちていく。
ついに頂上に立った二人。
「ついにやったねベッキー! あんた最高だよ!」
二人は足場に片手でぶらさがったり、「ヒャッホー!」とポーズをとって大はしゃぎ。
ベッキーは新たな人生を歩むことを決意し、ダンの遺灰を頂上から撒く。
「さあそろそろ地上に降りよう。キンキンのビールが待ってる」
ベッキーが脚をかけた途端、梯子は音を立てて崩れ落ちる。
「うそ…! 梯子が無くなってる…!」
呆然とする二人。
二人はすぐに降りる事を想定してか、水も食料もほとんど持ってきていないのです。
この手の作品の場合、通常 登場人物が危機に直面する本題のシーンまではダレがちなのですが、テンポの良い展開と、二人の女子のムッチムチの胸と尻にクローズアップする事で、視聴者の集中力を切らさないような工夫がなされている印象です。

「梯子が崩れた音を誰かが絶対聞いて通報してるはず。すぐに助けは来る!」
塔の上はもちろん圏外で、助けを呼ぶこともできない。
地上の電波を拾うため、スマホを靴に入れて落とすも失敗。
その他、考えうる限りの方法を試すも、助けは一向にやって来ない。
「私思うんだ。人生は儚いものだから、一瞬を噛み締めて生きなきゃダメだって…」
ハンターは隠れてダンと関係を持っていた。
「ベッキー私、間違ってた。本当にごめん。同じ人を愛してしまった。どうしようもなかったの…」
親友と夫が不倫関係にあったことを、よりにもよってこの状況で知るなんて…
「ダンを愛してたけど、あんたの方が大事だから別れた。 全部私のせい。今だってこんな鉄塔の上に取り残されている…」

塔の上に取り残されてから、24時間が経過した。
「あんた、6万人のフォロワーに無視されたみたいね…」
水の入ったリュックは、すぐ下のアンテナの上。
「リュックを取りに行ってくる。私が落ちたら、むしろせいせいするでしょ」
ハンターはロープで下に降り、リュックを取りに行こうと試みる。
二人の死を待つかのように、ハゲワシが二人の上を周回している。
「眠っちゃダメ! ハゲワシが血の匂いを嗅ぎつけて襲ってくる」
二人は互いに励まし合う。
「あんたに靴は貸せない… だって私は、あの時死んだから…」
ハンターはリュックを取りに行った時、ロープを掴み損ねて死亡していた。
「あんたは認めるのが怖かっただけ。あんたは、塔の上で、もう独りぼっち…」
中盤からの二人の会話は、疲労と恐怖ゆえのベッキーの幻覚だった。
本作の一番の見所は、このホラー要素ではないでしょうか。
このシーンにはゾワ~ッと鳥肌が立ってしまいました。

「パパ 私まだ戦うよ。死にたくない、家に帰りたい… 何か食べなきゃ…」
ベッキーは寄って来たハゲワシを、グワシッ!と掴み、その肉を食う。
「適者生存…」
自然界の食物連鎖の順位が入れ替わる瞬間。
「ハンター、ごめん。大好きだよ…」
ベッキーは靴に入れたスマホを、ハンターの内臓に押し込み、彼女を塔の上から落とす。
これまでのハンターの悪行を考えれば、このくらいは仕方ないでしょうね。
ベッキーは無事に救助されたようですが、世間から見れば二人はいわゆる「迷惑系ユーチューバー」で、彼女らに同情する人は少ないでしょう。
ベッキーは丸二日、ろくに水も飲まず、食べもせずに灼熱の塔の上に居た事になり、これは普通に考えたら不可能だと言えます。

撮影ではリアルな恐怖感を追求するため、砂漠にある崖に高さ30メートルの塔を実際に立てて、実写とVFXを融合し、地上600メートルの高さを表現したそうです。
二人の女優は厳しい環境の砂漠で、ほどんどスタントを使わず自身で演じていたそうですが、やはりあの絶望感と臨場感はスタジオ撮影のオールCGでは絶対に出せませんね。
彼女たちのガッツも賞賛に値します。
本作はネット上で様々な考察がなされており、梯子が無くてもロープを上手く使って降りられたのでは、ドローンにスマホを乗せて地上に降ろせば良かったのではなど、レビュー上で皆意見を戦わせていますが、それも本作が観客の共感を引き出せていたからでしょうね。
人間が高所で手汗をかく要因として、人間の祖先であるサルが木の上で暮らしていた頃、枝から枝へ飛び移る際に手が滑ると命に関わるため、滑り止めとして手に汗をかき、グリップ力を高めていた原始的な反応が、現代人に残っているからなのだそうです。
私も映画を見ている間、タオルが手放せないほど掌がびしょびしょになってしまいました。
本作のヒットを受け、2026年9月に前作と全く違うシチュエーションの「FALL 2: DEADPOINT」が公開されるそうです。
人間の原始的な恐怖の本能を上手く突けば、低予算のワンシチュエーション映画でも大作に負けないほど、見応えのある作品になるという事を証明したと言えますね。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れている事に感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー ★★★★★
流し見許容度 ★
午後ロー親和性★

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