アイデンティティ

洋画サスペンス

公開 2003年
監督 ジェームズ・マンゴールド
公開当時 ジョン・キューザック(37歳) レイ・リオッタ(49歳)

上映時間 90分

ネタバレありです。ご注意ください。

アメリカンホラーの定番「モーテル×殺人×大雨」が舞台の没入感のある秀作です。

90分間に何度も捻りとどんでん返しがある練りこまれた脚本で、午後ローで何度も見てオチがわかっているにも関わらずいつも最後まで真剣に見てしまいます。
冒頭からオチのヒントが提示されているにも関わらず、そこそこミスリードさせられてしまうのは、出演俳優らの「顔相撲」とも言うべきクセの強さのなせる技ではないでしょうか。

男女6人を殺害した死刑囚マルコム・リバースの死刑執行前夜、彼の死刑執行に関して再審議が行われようとしていた。
一方、大雨で身動きが取れない寂れたモーテルに男女11人が集まっていた…

冒頭に登場した死刑囚マルコムが「解離性同一性障害」という設定から、勘の良い人なら早々にオチを見破ってしまうのではないでしょうか。

ただ、ジョン・キューザック、レイ・リオッタ、レベッカ・デモーネイ、アルフレッド・モリーナさらには「ヒッチャー2」で体育会系サイコパスを演じたジェイク・ビジーまで登場しており、彼らの顔面力はまさに「顔相撲午後ロー場所」とも言うべきクセの強さで、冒頭の死刑囚マルコムのエピソードなど消し飛んでしまうほどです。

大雨の中、寂れたモーテルに集まったのは11人の男女。
運転手のエドと、その雇い主の女優カロライン。ジョージと、その妻で重傷を負ったアリスに、無口な息子のティミー。娼婦のパリス。ジニーと、その夫のルー。刑事であるロードと、移送中の囚人ロバート。モーテルの支配人ラリー。

たまたま居合わせたはずの彼らには、驚くべき共通点があった…

大雨で道路は冠水、電話は不通、陸の孤島と化したモーテルで、何者かの手により、一人また一人と殺害されていく。
登場人物は皆曲者ばかりで、誰が犯人でもおかしくないのです。

先住民の呪いや洗濯機の中の惨殺死体、必ず被害者の傍らに置かれるモーテルの鍵など、閉ざされた空間でのホラー映画のお手本のような描写が、緊張感を途切れさせることなく描かれます。

後から見返すと、この前半の中にいくつもの細かい伏線が張り巡らされており、終盤でそれらがすべて回収される隙の無い構成です。

「一体、どういう事だ…?」
謎の殺人者によって殺された4人の死体は、何故か跡形もなく消えていた。

「もう降参よ! 何が目的なの⁉ 私は来週で30歳になるわ! 故郷で静かに暮らしたいのよ…」
「俺も、来週が誕生日だ…」

驚くべきことに、居合わせた11人全員の誕生日は6月10日だった。

ここからストーリーは、ミステリーからサイコサスペンス展開に舵を切ります。

「問題は肉体と精神のどちらを罪に問うかです。殺人を犯した犯人は、彼の中ですでに消滅した…」

モーテルでの一連の出来事は、死刑囚マルコムの脳内で起きた出来事だった。
「解離性同一性障害」を患う彼は、自身を11人の人間に分裂させ、それぞれの役を演じていた。

精神科医の進言のもと、死刑を免れたマルコムは、監視の元で措置入院となる。

映画はその後、あっと驚く驚愕のバットエンドを迎えます。

マルコムが幼い頃父親から虐待を受けていた事、母親は娼婦で、モーテルに置き去りにされた事、それらすべての記憶の断片が彼を11人の人間に分裂させ、なかでもマルコムに殺人に駆り立てる一番凶悪な人格、少年トミーは消滅していなかった。 

少年トミーはマルコム自身の子供の頃の投影であり、モーテルでの一連の殺人はすべてトミーの手によるものだった。

登場人物の顔の圧で押す「顔相撲」映画の本作の中でも、マルコムを演じたプルイット・テイラー・ヴィンスはまさに「顔横綱」と言えます。
焦点が合わず小刻みに左右に揺れる眼球、オチに説得力を与える顔面力は文句なしで優勝ですね。
ちなみに彼は「コンスタンティン」でも見事な「白眼」芸を見せていました。

本作はアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」からヒントを得た作品だそうです。

90分と言うコンパクトさながら、元刑事の運転手、刑事のフリをした脱走犯、モーテルの店主のフリをした流れ者など、登場人物が一枚また一枚と化けの皮が剥がされ正体が露呈する描写など、随所に小さな捻りが盛り込まれる展開で、一瞬たりとも目が離せない技ありの脚本です。

な、アホな…」と言いたくなるようなどんでん返し系映画は多数存在しますが、本作は随所にしっかりとオチのヒントが提示されており、極めてフェアで完成度の高い作品と言えるのではないでしょうか。

「ユージュアル・サスペクツ」のようなどんでん返し系に属するため、一度見たら終わりという人もいるかもしれませんが、夜のモーテルにバケツをひっくり返したような雨、ぐしょぐしょに濡れた服と髪、火花を散らして跳ねる電線など、残像が脳裏に残り何度も見たくなる映画です。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れている事に感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★★
流し見許容度★
午後ロー親和性★★★★

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