ザ・メニュー
午後のロードショー大好きなパート主婦です。
今回は最近見た映画ザ・メニューの感想です。
(ネタバレ有です!ご注意ください!)
公開 2022年
監督 マーク・マイロッド
公開当時 レイフ・ファインズ60歳 アニャ・テイラー・ジョイ26歳 ニコラス・ホルト33歳
この映画は「5時に夢中!」の中瀬ゆかりのエンタメ番付で紹介されていたことがきっかけで視聴しました。
かなり期待値を上げた状態で見たにも関わらず、イかれてぶっ飛んだ最高のサスペンスホラーという印象です。
太平洋の孤島にある、予約が取れない事で有名な高級レストラン「ホーソン」
シェフのジュリアン・スローヴィクのふるまう極上の料理にはひとつひとつに想定外のサプライズが添えられていた。
メニューの裏に隠された秘密や、ミステリアスなジュリアンの正体が徐々に明らかになっていく…
この映画の天才シェフ、ジュリアンを見ると、つくづく天才と狂人は紙一重だなと感じます。
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」の進化系のような内容かと思いましたが、予想の斜め上を行く展開で、ありがちなサスペンスの枠を一気に飛び越えてしまったと言えます。
メニューと共に進んで行く、ジュリアンの歪んだ「芸術作品」
「パンは昔から庶民の食べ物でした。したがって庶民でない皆様にはパンを提供しません」
富裕層を目の敵にした、ジュリアンの不思議なメニューが次々と出されるのです。
徐々に不穏な空気に包まれるレストラン。
貧しかったジュリアンは研鑽を積み、一流シェフにまで上り詰める。
自らは常に奉仕する側であり、店に訪れる富裕層の舌を満足させなければいけない。
「与える側」と「奪う側」
至高の域にまで高められた芸術を味わう事ができるのは資本主義社会において富裕層であり、芸術家の主な顧客になるのも富裕層なのです。
顧客である富裕層には自分の芸術を理解できる者はいない。
才能も努力も無駄に消費されるだけ。
料理を芸術の域にまで極めてしまったがゆえ、自らの信念が独り歩きししてしまう。
彼の怒りの矛先は、レストランを訪れる富裕層へと向かう…
集められた客は、ほぼジュリアンの思い込み、逆恨みによって殺害されていくのです。
終盤のマーゴのセリフ「シェフの唯一の役目は料理でお客を喜ばせる事よ。あなたは客から食べる楽しみを奪った。」
レストランの客に感情移入していた私は、彼女のこの言葉に溜飲が下がる思いがしました。
料理も芸術も、結局は人のため、人を喜ばせるためのもの、という事を忘れてはいけませんね。
表現者が受け手にとやかくケチをつけるようになっては、傲慢というものではないでしょうか。
客に異常な緊張とマナーを強いるラーメン屋などがありますが、それと重なってしまいました。
小娘にシェフとしてのプライドを傷つけられた天才シェフは、彼女の注文通り極上のチーズバーガーを作る。
「食べきれないから、持ち帰ってもいいかしら」
バーガーの代金、9ドルを支払い去るマーゴ。
ジュリアンが彼女を見逃したのは、彼女を自分と同じ「与える側」だと認めたらでしょうか。
アニャ・テイラー・ジョイは未来型美女と言うか、宇宙人を思わせる個性的な顔立ちですね。
細身の体に下着のようなスリップドレス姿で奮闘する彼女はとても魅力的です。
キュートなのにどこか野生の動物のようなワイルドさもありますね。
この映画のマーゴは貧困層出身の娼婦であり、彼女もまた富裕層に奉仕する「与える側」なのです。
生きるために腹が膨れればいい彼女にとって、孤島のレストランツアーは最初からバカバカしかったのではないでしょうか。
ラストで炎上する島を見ながら「アホくさ」とでも言いたげな顔でチーズバーガーを食べる彼女には凄みすら感じます。
レイフ・ファインズ演じるジュリアンの始終宙を泳いでいるような、狂気に満ちたまなざしが印象的です。
レストランの客はジュリアンが最後の芸術を完成させるため選び抜いた11人であり、マーゴが代理で現れた時点で、彼の芸術の完成は不可能になったのです。
ニコラス・ホルト演じるタイラーが最初に連れてくる予定だった女性とは、どのような人物だったのでしょうか。
映画ではそのことにはあえて触れていません。
最後まで緊張感が途切れず、吸い込まれるように一気に見てしまいました。
この映画は不穏な空気漂うサスペンス映画というカテゴリーから「ミッドサマー」と比較されることが多いようなのですが、両方見た私としては比較するのが失礼なほど、この「ザ・メニュー」の方がサスペンスとしてはるかに優れていると思います。
まさに意表を突かれた、「こう来たか~」といった感があり、見た後、誰かと内容について語り合いたくなってしまいます。
これぞ映画を見る醍醐味だと思うのです。
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画像引用元
Filmarks
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