魔界転生

日本映画

公開 1981年
監督 深作欣二
公開当時 沢田研二(32歳) 佳那晃子(25歳) 真田広之(20歳) 千葉真一(42歳)
上映時間 122分

角川映画製作、80年代のアイコンとも言える沢田研二主演という事から、当時の空気感がギュッと詰め込まれており、見るだけで脳が当時にタイムスリップするような力強さがあります。

当時は角川映画の「里見八犬伝」や「戦国自衛隊」などのSF×時代劇の映画が大ヒットを飛ばしており、本作もその流れで制作されたものと思われます。
尖った映像とエロいシーン満載で、沢田研二と真田広之のキスシーンは衝撃的でした。

沢田の妖艶な存在感が映画にぴったりとハマり、天草四郎を知らずとも説明不要で世界観に引き込まれます。

寛永15年、幕府軍は島原の乱を鎮圧し、大将 天草四郎以下2万人近い信者を惨殺する。
四郎は仇を討つべく、悪魔の力を借りて死体の山から蘇る。

「エロイムエッサイム… エロイムエッサイム… 我は求め訴えたり…」

単純極まるストーリーで、天草四郎が無念の死を遂げた剣豪らを蘇らせ、チームを組んで幕府軍に復讐を仕掛ける構成です。

当然CGを使っていない背景は細部まで作りこまれており、冒頭の斬首された生々しい首が並ぶセットは芸術的で舞台美術のようでもあり、制作者の意気込みを感じます。

四郎が最初に転生させたのは、戦国時代に非業の死を遂げた細川ガラシャ。
「わらわの眠りを妨げる者は誰じゃ…?」
「私は天草四郎… 今一度この世に生まれ帰りたいとのお方様の悲願、叶え参らせたく…」

細川ガラシャは、父・明智光秀の謀叛により「逆賊の娘」として幽閉され、夫の激しい執着と時代の荒波に翻弄された悲劇の女性で、戦国時代に詳しくなくとも彼女の名前を知っている人は多いのではないでしょうか。

ガラシャの役は佳那晃子が演じており、沢田研二に負けず劣らず妖艶で美しく、この世ならざる者のオーラを発しています。
当初はこの役に松坂慶子の名も挙がっていたそうです。
後半では激しい濡れ場も演じており、当時地上波放送を両親と見ていた私は何とも言えない気まずさを感じたものです。

天草四郎と細川ガラシャはタッグを組み、非業の死を遂げた剣豪らを次々と転生させる。

二人が最初に転生させたのは宝蔵院胤舜。

女性への煩悩を断ち切れぬ己を恥じ自害した宝蔵院胤舜を魔界衆として転生させ、配下に加える。
「その思い、無念な心、我らにしばしお預けなされ… さすればたちまちこの世に蘇る…」

宝蔵院胤舜は槍の達人で宮本武蔵と一戦を交えるクールな格闘家のイメージがありましたが、本作では女性への煩悩をどうしても断ち切れず、転生した後は前世の鬱憤を晴らすべく四六時中女性の尻を追いかけ淫靡な行為にふける中二病のような情けないキャラクターとして描かれています。

その後、宮本武蔵、伊賀忍者 霧丸を次々と転生させ、「魔界衆」に加える。

武者修行として諸国を回っている剣客・柳生十兵衛は旧友の伊賀忍者・霧丸に会おうと伊賀衆の隠れ里に向かっていた。
十兵衛は魔界衆が徳川幕府を滅ぼして天下を混沌に陥れようとしている事を察し、それを阻止しようと江戸城へ向かう。

本作には千葉真一、真田広之を始めとするジャパンアクションクラブの俳優が多数出演しており、主要キャストがスタント無しの生身のアクションを披露しています。
千葉真一演じる十兵衛と、若山富三郎演じる但馬守の殺陣のシーンは、俳優本人が発する迫力と緊張感に溢れ、やはり「肉体は俳優の言葉」だという事を強く感じさせます。

十兵衛は魔界衆討伐のため、体中に梵字で経を書き、魔物を斬るための妖刀を携え江戸城へ向かう。
魔界の者と化した宮本武蔵、宝蔵院胤舜らを次々と倒し、
「永遠の命など不要… 己だけは絶対に斬らねばならぬ」
燃え上がる江戸城で、天草四郎 柳生十兵衛は最終決戦に挑む。

十兵衛は妖刀で四郎の首を切り落とす。
しかし、四郎は倒れず、その首を小脇に抱えると炎の中に飛んで消えていく。

十兵衛はそれを見据えながら、一層燃え上がる炎の中、ただ独り佇ずむ。
「人間がこの世にある限り、私は必ず戻ってくる 十兵衛、勝負はまだ終わっていないぞ!」

映画はこのシーンで突然終わりを迎えます。
このエンディングは当時も消化不良な感が否めませんでした。

このラストシーンはCGによるものでは無く、スタジオに作った江戸城のセットに実際に火を付け撮影され、三日三晩ぶっ通しの過酷な撮影の中、演者 スタッフも火傷を負うものが多かったそうです。
現在では安全面においても考えられない事でしょうが、「良い画を撮りたい」という監督の執念、それに呼応する俳優らの情熱が感じられます。

「魔界転生」は2003年に窪塚洋介でリメイクされましたが、やはり沢田研二版と比べ「薄味」と言わざるを得ませんでした。

昭和の芸能人というのは、役柄以前にそれぞれ俳優としてのバックスストーリーを背負っており、共演者同士まさに人生と人生のぶつかり合いのようなコラボレーションだったと言えます。

本作は沢田研二のために創られた映画と言っても過言では無く、中性的で華の中に毒があり、彼以外「病み系美少年」天草四郎を演じられる俳優は当時も現在でも存在しないでしょう。

現在「転スラ」を始めとする主人公が転生する漫画が人気を博していますが、この「魔界転生」こそ元祖転生、令和の若者にも本作をぜひサブスクで視聴して欲しいものです。

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