公開 1990年
監督 ロブ・ライナー
公開当時 キャシー・ベイツ(42歳) ジェームズ・カーン(50歳)
上映時間 108分
映画史上最恐のヒトコワ作品と言えます。
「痛み」の映画と言っても良いほど被害者の苦痛と、理不尽な要求を繰り返す狂人に生殺与奪の全権を握られている恐怖をじっとりと体感する事ができます。
本作にはハンマーで脚を砕くなどの凄惨なシーンはあるものの、スティーブン・キングの原作と比較すると暴力描写はかなりマイルドに描かれています。
仮に原作に忠実に映画化していたとしたら、間違いなくR18指定を受けていたでしょう。

小説「ミザリー」の作者である流行作家のポール・シェルダンは、雪道で自動車事故に遭い、瀕死の重傷を負う。
そんな彼を助けたのは、「ミザリー」の熱狂的な愛読者で、元看護士のアニーだった。
ポールは当初、命を救ってくれたアニーに感謝するも、電話が通じない事を理由に病院へ連れて行かない事を不審に思う。
ポールが所持していた最新作の原稿を読んだアニーは、登場人物のセリフの汚さに激高する。
「あたしがこう言ったらどうする⁈ ”そこの汚いブタの餌をくれ! そこのクソみたいなコーンだよ‼”」
豹変し怒り狂うアニー。
アニーが手の付けられないヤバい奴だという事に気付いたポールは戦慄する。
が、それはこれから始まる惨劇の序章に過ぎなかった…

「神様の啓示を受けたのよ。正しい事を行いなさいって」
アニーはポールにミザリーの新作を執筆するよう強要し、「神がお望みなのよ」買い上げたばかりの最新作の原稿を自らの手で燃やすよう促す。
ポールはゲン担ぎのため、新作のコピーはとらない主義だった。
アニーに脅され、仕方なく原稿に火をつけるポール。
「いつか殺してやる…」
我が子のように大事な新作の原稿が燃えて炭と化すのを見ながら、ポールは心の中で呟く。
この怒りの感情は、この先彼が様々な責め苦に遭いながらも生きながらえる原動力になるのです。
アニーは古いタイプライターをポールに与え、アニーのためだけの続編「ミザリーの生還」を執筆するよう迫る。
ポールは「ミザリーの生還」を執筆しつつ、アニーを油断させ逃走しようと試みる。

ポールは骨折した両脚を引きずり何度か脱出を試みるもことごとく失敗。
「二度も逃げようとしたわね」
アニーはポールの脱出未遂を見抜いていた。
「南アフリカのダイヤモンド鉱山でダイヤを盗むとどうなったか知ってる? 足潰しの刑よ」
アニーはポールの足の骨をハンマーで砕く。
本作は午後ローで何度も放送されていますが、いつもこのシーンは正視することができません。
実際には砕くシーンそのもは見せず、ポールの叫び声のみで表現されているようです。

村のバスター保安官は、ポールの乗ってたと思われる乗用車のドアが、外側からバールのようなものでこじ開けられていた形跡があることに疑念を抱き、彼が何者かに拉致されたのではと推測する。
町でアニーを見かけたバスター保安官はアニーの過去を調べ上げ、彼女が「ミザリー」のファンだという事に気付き、調査のためアニーの家に赴く。
ポールの存在を隠したいアニーは、バスター保安官を背後から射殺する。
バスター保安官は原作には登場しませんが、のどかな田舎の保安官ながら鋭い観察力と正義感に溢れ、ポール救出まであと一歩の所で殺害されてしまったのが残念でなりません。
副保安官を務める妻との関係性も微笑ましく、彼を死を知った後の妻の悲しみを考えると胸が痛くなります。

ついに「ミザリーの生還」が完成する。
ポールには、ある計画があった。
「やっと完成したのね⁉ シャンパンでお祝いしなきゃ‼」アニーは歓喜する。
シャンパングラスを持って現れたアニーの前で、ポールは原稿に油をかけ火を付ける。
「君も同じ事をしたろ?」
「やめて‼ 私のミザリーが‼ 何てことを‼」
火を消そうとかがみこんだアニーの頭に、ポールはタイプライターを打ち付ける。
アニーの口に、燃えた原稿を突っ込みながら
「どうだ、気に入ったか⁉ そんなに読みたきゃ、これを食ってみろ‼ 殺人鬼め‼」
耐えがたい悔しさと屈辱を耐え抜いた怒りが爆発する。
激闘の末、アニーは絶命する。
ポールは救出された。
だが、事件のトラウマからは永遠に逃れられない。

私が記憶している映画のテレビCМは、雪深い田舎町の小さな家の映像に抑揚のない男性の声で「私はポール・シェルダンです。私は閉じ込められています。誰か、助けて 助けて…」という地味なものでしたが、それがかえって想像力を煽り当時小学生だった私は、映画を見る前からトラウマになったのを覚えています。
公開当時アニーはただの恐ろしいオバさんという記憶がありましたが、当時42歳のキャシー・ベイツは美しく、ポール役のジェームズ・カーンもダニエル・クレイグ似のイケおじですね。
原作があまりに陰惨で残酷な描写が多いせいか、映画ではかなりライトに描かれている印象ですが、それでもアニーとポールのイメージは二人の俳優ににぴったり重なり、彼ら以外のキャスティングは考えられないほどです。
原作に編集が加わってもクオリティを微塵も損なっていないのは、二人の俳優が映画のエッセンスをしっかりと吸いあげている証拠ですね。

スティーブン・キングの原作では、アニーという予測不能な狂人の一挙手一投足が細かに描かれており、作者は執筆するにあたり精神疾患を持つ患者を深く観察したのでは無いかと思われます。
キャシー・ベイツ演じるアニーは、ポールとのディナーにおめかしして現れたりと、恋する乙女のような可愛い面を垣間見せる事もありますが、一方の原作のアニーは取り付く島もない恐ろしい狂人で、彼女の怒りの地雷を踏まないよう細心の注意をはらうポールの恐怖と緊張感を共有することができます。
映画でアニーがポールの足をハンマーで砕く描写がありましたが、原作でアニーはなんと片足を斧で切断、さらには左手の親指をも切断するという凶行におよびます。

アニーはポールが「歩くニトログリセリン」と頭の中で称するほど、怒りに任せてどんな暴力をふるうかわからない狂人で、彼女自身が「私って、癇癪もちだからね。自分が何をしたか忘れちゃうの」と言うくらい、ポールのわずかな失言にも過剰に反応し、恐ろしい暴行を加える。
ポールが脱出を試みた事を察すると、斧で足首を切断しガスバーナーの火で止血、タイプライターが壊れた事で不満を言った罰として親指を電気ノコギリで切断する。
ポールに「ミザリーの生還」の執筆を強要し、さらには編集者さながら「リアリティが無い」などとダメ出しをし、自身の気に入るまで書き直させる。
ポールは自らを「アラビアンナイト」のシェヘラザードに例え、「私が”ミザリー”を書き続けている間は、彼女は絶対に私を殺さない」と、気力を振り絞ってタイプライターを打つ。

作家ポール・シェルダンはこの上なく悲惨な状況にも関わらず、常に気品と知性とユーモアを忘れず、生きる希望を最後まで持ち続け戦う勇気があり、さらにはこれほどの暴行を加えられてもアニーに対し「もし彼女がまともに成長していたら、彼女の内部の分泌腺が正常に機能していたら、彼女が本来なっていたかもしれない普通の女性の姿を垣間見てつらくなる」と哀れみにも似た感情を示すなど見上げた人格者として描かれています。
この上なく陰惨な内容の小説ながら、ポールの置かれた状況に比べれば、今の自分の悩みなど些末な事に思え、逆に元気を貰うことができ、何度も読み返してしまいます。
本作では「人間がされたら嫌な事」を凝縮した作品と言えますが、その上にさらに「作家がされたら嫌な事」が乗っており、作者のスティーブン・キングはドМ気質があるのでは、と思ってしまいました。
今日も無事に家に帰って午後ローを見れている事に感謝😌です。
総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★★
流し見許容度★
午後ロー親和性★★★★

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